嘘
生徒会の活動の最中も、鑓水の発言のことで沙良は頭がいっぱいだった。当の鑓水はいつも通りヘラヘラとしているし、波折はツンとした顔をして進めているし。
「あっ、なあー波折、俺のクラスの出し物で相談あんだけど」
「なんだ」
「あとでいいや。個人的なことっていうか、今じゃないくてもいいし」
「……じゃあこれ終わったら残って」
「はーい」
鑓水がだらだらと椅子に寄りかかって波折と話している。今の会話によれば今日は鑓水が波折と放課後を過ごすらしい。……波折と話すチャンスはなさそうだ。
「沙良!」
「はいっ!」
ぱん、と紙束で頭を叩かれて沙良は悲鳴をあげる。恐る恐る顔をあげれば、苛々とした様子の波折。
「またぼーっとしてるな。リコールされるぞ」
「す、すみませんー」
沙良はへこへこと謝りながら、戻ってゆく波折の背中をみつめる。
(……基本、あれが他人への態度なんだよな。俺は奇跡的に本性見れたとして、あれに言い寄るのってかなり難易度高くね?)
もやもやとした気持ちは一向に晴れない。いつこのことを波折に聞けるのかな、と思うとまた沙良は鬱屈としてしまうのだった。