とある狂人の育成記19
波折が二年になったばかりのころ。新しく生徒会メンバーが編成されたのだが、そこに新しいメンバーが入って来た。鑓水慧太という生徒だ。一年のころから成績はかなりよかったと思うが、春の時期に三年を押しのけて二年で生徒会に入れるとはなかなかやる子だ。二年になると、魔術の知識もそれなりについて、魔術試験の成績は知識量よりも人間性によって左右されるようになる。そんななかで鑓水はダントツの成績をみせた。今までジャッジメントスクールでみてきた生徒よりも、ずっとずっと、点数は上だった。防御特化、ということでそれだけをみれば興味は惹かれないが、ここまで点数が高いと気になるものだ。
鑓水は、見た目はチャラチャラとしていて軽そうにみえる。どうせ女をたくさん食っているのだから、そのノリで波折のことも食ってみてくれないかな、なんて俺は思っていた。でも、鑓水はなかなか波折に手を出してこない。よくよく鑓水を観察してみれば、思ったよりも変わった人間だった。たしかに女付き合いはそこらの男子よりもずっと多く、しかも家に帰らず女の家に泊まったり、なんていうことをいつものようにしている。だが、セックスのことばかり考えている猿のような頭をしているのかと思えば、そうではない。彼は、時折、異常に冷めた目をしていた。彼は、他人に興味を持っていなかった。
そんな彼は生徒会という他の生徒よりも波折と近い距離にいながらも波折に好意を寄せる様子はない。好意とまではいかなくても、あそこまでずば抜けて目立つ生徒が近くにいればお近付きになりたいと考えるものだと思うが、そんな様子もない。適度な距離を保ち、「友人」として波折と付き合っていた。波折も、そんな絶妙な距離感でそばにいてくれる鑓水のことを気に入っていたのか、「慧太」と下の名前を呼んでいた。
しかし、あるとき。鑓水が「奴隷調教日記」にでている少年が波折だと、気付いた。聞けば、波折の身体の特徴を動画の少年に発見したとかなんとか。ほくろの位置、体調、注意してみていなければ気づかないような特徴に、鑓水は気付いたらしい。鑓水は俺の思ってもいなかった歪んだ感情を、波折に抱いていたのだ。
普通の生徒にはない歪みを持った鑓水は、ジャッジメントスクールで波折に次いでトップに立った。これは俺も鑓水に興味が湧いて仕方がない。鑓水にそれなりに好意を抱いていた波折の反対を押し切って、俺は鑓水が波折のことを好きになるように仕向けた。しばらくして鑓水は波折に堕ちて、そして彼の持っている本質を現すようになる。