とある狂人の育成記9


 波折が中学一年になるころ。俺は二等裁判官として、それなりに魔女を捕まえるようになっていた。相変わらず波折の家の夫婦は家に帰ってこない。一度俺の家に波折を連れ込んで家に帰さなかったときも、夫婦は何も言ってこなかった……というのをきっかけに、波折が中学生になってからは頻繁に俺の家に泊めるようになっていた。

 裁判官になってから、俺がなんとなく感じていたことがある。魔女となった犯罪者の犯行動機と、使える魔術の性質に相関関係があるんじゃないか、ということだ。とにかく人を殺したくて仕方なかった、と証言した魔女は若干ではあるが攻撃魔術が得意なようだったし、襲われたときの反撃として人を殺めてしまった魔女はやはり若干ではあるが防御の魔術が得意なようだった。それに気付いたときは「魔術を使おうとしたその瞬間」の感情が魔術の性質に影響するのかと思ったが、なんとなくそれは違和感があると思って、もう少し調べてみようと、そう思った。

 その実験に使えるかな、と思ったのが、波折だ。この頃の波折は本当に俺に依存しきっていて、俺が波折の全てのようになっていた。友人との交流もそれなりにしていたようだが、俺とのセックスよりも愉しいなんてことはなかったらしい。波折は俺の言うことをなんでも聞いたし、自分自身というものを持っていなかった。望みらしい望みもないし、好きなものも特に無い。あえていえば、俺とのセックスが好きでたまらない、それくらい。

 ためしに、波折に魔術を教えて使わせてみる。裁判官でもない波折が魔術を使ったこの時点で波折は魔女となってしまったわけだが、俺が魔力隠蔽をしてやっているから裁判官に捕まることはない。


「ほおー、波折、魔術の得意不得意にばらつきがないね」

「うん……」


 やってみた結果、波折はどの魔術を使っても同程度の威力を発揮できた。もちろん、まだ知識が足りないため俺には全然劣るが。全ての種類の魔術を均等に使える人もいるのかな……とも思ったが、それから色々な魔女をみても、そんな人物は波折しかいなかった。

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