とある狂人の育成記5

 はじめのうちは、編み出した魔術の実験をするために波折に会いに行っていた。たとえば、誰かに俺のことを口外しそうになったときに言葉を話せなくなってしまう魔術、魔術で新しい空間を作り出してそこに引き込む魔術。昔の犯罪者が喉から手が出るほどに欲しがるような魔術を、俺はそう苦労もなくつくることができていた。

 幼い波折は、長い時間を共にすることによって俺に懐くようになってきた。俺が彼の親を殺したのがまだ彼の自我が確立していないころだったためか、彼は俺を親の仇としてみるよりも「お世話をしてくれるお兄さん」として見るようになっていたのだと思う。実際に、俺は彼に好きなものを与えたりして、彼が自分に懐くように仕向けたりもしていた。

 波折が言葉をしっかりと話せるようになったころ。俺は彼の容姿が飛び抜けて良いものだと気付き始めた。まだ子供だから、大人になったら顔つきは変わるかもしれない。でも、顔のパーツをそれぞれにみていけば、このまま育てばとんでもない美男になりそうだ、と思わせる顔立ちをしている。そういえば殺した彼の姉が美人だったな、と思い出す。

 これは……使えるんじゃないか。そう思った。このまま彼を自分に懐かせて、操り人形にして、そして何かに使えそうだと。

 ただ育てるだけじゃあ完全に自分の支配下には置けなそうだ。普通の親子の子供が思春期なんかにはいって親離れしていくのと同じものが、彼にも起きるかもしれない。じゃあどうしようかな。そう思った時に俺が思いついたのは、あんまり自分でも気が進まない方法だった。
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