とある狂人の育成記3


 魔術は、たぶん成功したと思う。ちゃんと魔力の気配を消すことができている。これならば裁判官が駆けつけてくるということもなさそうだ。

 この冬廣家は、四人家族だったらしい。親が二人、やたらと美人なお姉さんが一人、そして三歳の男の子が一人。今日が土曜日、ということもあって、まだ昼間ではあるけれど四人全員が家の中にいた。突然侵入してきた俺をみてはびっくりしていたけれど、燃やしたら何も話さなくなった。

 父親は一番初めに燃やして、次に姉。最後に、母親とその子供を燃やそうと思った。母親が、やたらと「この子だけは、この子だけは」と鬱陶しかったから、彼女は燃やすんじゃなくて頭をふっ飛ばした。

 最後に残ったのが、男の子。母親の血を大量に浴びて、泣いている。喧しいからさっさと壊そうと思ったけれど、なんとなく、俺は手を止める。なんでだかはわからない。この男の子、殺すのはもったいないような気がした。

 丁度、テーブルの上に何かの資料が乗っている。保育園かなにかの入園の提出用の書類だろうか。そこに、この男の子の名前が書いてあった。

 この男の子の名前は、冬廣波折、というらしい。

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