朝のできごと1

「沙良……おい、沙良。起きろ」

「んー……」


 ゆさゆさと身体を揺さぶられる。瞼の裏が、明るい。朝が来たのか……と沙良は気付いたが、布団の中が気持よくて起きる気分になれない。沙良は自分を揺すってくる手を軽く払いながら唸って、もぞもぞと布団にもぐる。


「遅刻するぞ」

「んん……もうちょっと……波折せんぱいー……」

「その波折先輩と昨日何をしたのか知らないけど、起きろ、沙良。今日も学園祭だろ」

「……ん?」


 あれ、と沙良は瞼をあける。目の前に、くうくうと寝息をたてて寝ている波折。起こしてきているのは波折じゃない……? ということは、


「……うあっ!? ちょっ、父さん」

「おはよー沙良。昨晩はお楽しみでしたね」

「はっ!? あっ、いや、その」


 ばっと振り向けば、洋之がにやにやと笑って見下ろしていた。沙良は「ハハ、」と苦笑いするしかない。だって、今の自分は裸の波折をぎゅっと抱きしめているなんて「事後です!」と宣言しているような状況なのだから。


「ん……」

「あっ、波折先輩」


 沙良がだらだらと冷や汗を流していれば、波折が身動ぐ。起きちゃう、起きちゃうぞ、と沙良が焦っているうちに、波折はあっさりと目を覚ましそして洋之を見上げた。「んー……」としばらくぼやいて、ぼんやりと洋之を見つめる。


「……おはようございます、おとうさま」

「おはよう、波折くん」


 へにゃ、と笑った波折に洋之は笑顔で挨拶を返した。なんでおまえらそんなに普通なの、と沙良は突っ込みたい気持ちでいっぱいだ。


「はやくふたりともリビング来いよー。飯冷めるからな。服は着て来い」

「はい……」


 洋之があっさりと部屋を出て行ってしまう。やばいちょーきまずい、と沙良が頭を抱えていれば、波折がつんつんと唇で頬をつついてきた。


「沙良も、おはよ」

「……おはようございます」


 うわくそ可愛い最悪。なんかどうでもいいや、となって、沙良はぽいっと布団をめくりあげた。
prev * 230/299 * next
+bookmark
| 表紙
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -