生徒会の人たち4


 月守が出て行って少したったときのことだ。沙良のクラスメートが今日一番のざわめきをみせた。もしかして、と思ったが、やはりそのようだ。すぐに、「生徒会長が来た!」と沙良に伝わってきた。とうとう来たか、と沙良は迷路の隙間からぐっと外を覗き込む。


「波折先輩……!」


 波折は数人の男子生徒ときていた。彼らは波折を先頭にして、びくびくと震えながら進んでいる。裏側の生徒たちが必死に波折を驚かせようとしているが……どうやら波折はそこまで驚いていないらしく。仕掛けてくる生徒に気を使うように軽く驚いたふりをしたあと、苦笑い。


「くっ……波折先輩可愛いな……」

「あっ、わかる! 可愛いよな!」

「えっ、わかる?」


 思わず沙良が呟くと、翼からまさかの同意をもらえた。波折はいつも「かっこいい」と言われているイメージのため、沙良は少しびっくりしてしまう。


「いや、王子様っぽいんだけど、ふとした仕草が可愛いっていうか〜……まとってる雰囲気がな〜なんか可愛い」

「まじか! 近くでみてるとほんとに可愛いよ! まじで! ほんとに!」

「いいな〜生徒会。あんなのと一緒にいたら理性持たないわ〜。みんな生徒会長に掘られたいとか言ってるけど、俺は掘りたいね。絶対可愛い」

「みんな掘られたいとか言ってんの!?」


 この学園がヤバイのか、波折が人を惹きつけすぎてしまうのか。波折の思いにもよらない男人気に驚いているうちに、波折は沙良の位置を通り過ぎてしまった。がんばって後ろ姿だけでも見届けようとして……ちらりと後頭部だけがみえる。


「あー……頭も可愛い」

「撫で回したい」

「髪がな〜ふわふわ」

「そう、ふわふわ」


 沙良と翼は目を合わせて、頷く。身近に波折の可愛さについてわかっている人がいて、沙良もテンションがあがってしまっていた。

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