弱さの素因1
 家に帰り、シャワーを浴びると二人は裸で布団に潜り込んだ。裸で抱き合ったほうが鑓水にとっては心が落ち着くだろうと、波折が服を着るのを拒んだのだった。実際に、素肌で触れ合い体温を溶け合わせると、ひどく安心した。


「波折……」

「んっ……」


 ぎゅ、と強く抱きしめられた。波折も目を閉じて彼の胸に頬をすり寄せ、抱きしめ返す。

 鑓水はしばらく波折の頭を撫でたり、波折の顔全体にキスをしたり……波折を可愛がるようにしていた。こうして心の平静を保っているのかもしれない。過去を話すということは、細部までその苦しい思い出を思い出すということ。鑓水にとってそれはひどく恐ろしいことだったのだろう。


「慧太……いいよ、無理しなくて」

「……いや、だっておまえが狙われているから」

「……慧太」


 波折のほうからも、キスをした。強張る鑓水の心をほぐすように、柔らかいキスを何度もしてやる。

 ずっと、そうやってお互いの身体を愛でていた。しばらくすると鑓水もようやく話す気になったのか、波折の瞳をじっと覗き込む。波折は鑓水の手を掴んで、指を絡めてやった。そして、淡く微笑んだ。
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