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「セラ、明日から休みだろ? 休み前にがっつり客とってきてくれよ〜」
「はーい、わかってます」
明日から一週間の休みをもらったので、その分今日は張り切って働くことにした。いつもは俺好み汚らしい男を誘うんだけど、今日は稼ぎたかったのでお金のありそうな身なりの綺麗な人を誘ってみる。夜の街を歩いて、何人かに声をかけて……俺が見つけたのは。
「わあ〜こんにちは!」
智駿さんという、最近であった人。関係的には知り合いの知り合いといったところ。
智駿さんは友人らしき男の人と飲み屋から出てきた。俺はさっそく、彼らに声をかけてみる。ねらいは、智駿さんの友人らしき人。彼の身につけている時計、普通の人には手を出せないような高級品だ。
「ああ、こんにちは。梓乃くんのお友達だっけ?」
「はいっ!」
俺は智駿さんにすり寄るようにして、彼らに近づいていった。智駿さんは人当たりがいいから、こんなところで俺に声をかけられても笑顔で言葉を返してくれる。隣にいる人相の悪い男の窓口としては最適な人だ。
「おー、誰だぁ、こりゃまたずいぶんと美少年だな」
「セラです! 夜のお仕事しています!」
智駿さんの友人らしき人は、俺をみるなり興味津々といった様子で近づいてくる。人相の悪さに反して、意外とよくしゃべる。ただ、かなり胡散臭い。飄々としているわりに、裏で何を考えているのか、わからない人だ。
……どうだろう。この人を、ターゲットにしていいものか。金は確実にあるし、捕まえれば儲けがでるだろうけれど……この人、俺の苦手なタイプな気がする。容姿は置いておいて、なんというかこの人は……人の心の隙に入り込むのが得意そうだ。客としてではなく、人として俺が苦手とするタイプ。
「あのー、これからの予定は?」
「帰るところかな」
「そうなんですか! 俺のお店にきません?」
「セラくんの?」
でも、一か八か誘ってみる。人として苦手だからなんだ、一夜限りの相手にそんなことは関係ない。金があればいい。この男は、絶対に金を持っている。
誘ってみれば、男は悪い顔はしなかった。意外と、俺に興味を持っている。……というよりは、酔っているから風変わりなものに興味を引かれているだけなんだろうけれど。
彼らは、俺の仕事をホストかなんかと勘違いして着いてきてくれることになった。人の良さそうな智駿さんには正直悪いなあと思うけれど、俺はこの男の金が欲しい。とんでもない所に連れて行くことにはなるけれど……ごめんね、許してね。
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