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「なあに、山崎さん。すごい顔」
裸の俺をみた「山崎さん」は、それはもうすごい顔をしていた。まあ、その理由なんて考えなくてもわかる。この、体が「スゴイ」からだ。
「セラくんって……いつもこういうのしてるんだ?」
「俺が一番『高い』んだから察してよ。どんなプレイでも承りますってことだよ」
一条 翼(いちじょう つばさ)二十四歳。職業・売り専。源氏名はセラ、二十歳ってことになっている。
俺を買った人は、俺の体をみるとほぼ百パーセント驚く。……というのも、俺を買う男の6割くらいが強烈なSMプレイを所望してくるため、俺の体は痣だらけなのだ。俺の働く店で過激なSMプレイOKなネコは俺くらいなので、俺にはそういった特殊性癖の客がよくついてしまう。
「傷物はお嫌い? 山崎さん」
「……いや。すごく、いやらしいと思う。僕は好き」
「そうでしょう? ほら、ほかの男とセックスいっぱいしてる俺をさ、躾けなおしてよ。いっぱい傷をつけて。俺のこと、山崎さんのドレイにして」
でも俺は、無理してそういうことをやっているわけではない。お金が猛烈に必要なわけでもないからそこまでして体を張る必要はないのだが、SMプレイが「できる」からOKしている。できるからやって、それでお金が稼げるのなら、やろうと思うだろう。おかしなことではないと思う。
山崎さんは、結構俺の好きなタイプだと思う。見た目からしてド変態だし、顔も脂ぎってて良い。ベルトに腹の肉が乗っているあたりとか最高。
「……セラくん」
「ん? ……ひっ」
ホテルにはいって、少し経って。山崎さんは少しずつ、変態ジジイの顔になっていった。俺の顔を思い切りビンタしてベッドに押し倒すと、倒れた俺の上で持っていた紙袋をひっくり返す。そうすれば、中からはバラバラと大量のおもちゃがでてきた。
「……僕のことは、『ご主人様』って呼んで」
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