甘い恋をカラメリゼ | ナノ
 sept

「どうだった、梓乃ちゃん!?」


 問題の教科が終わってから数日後。成績発表はまだ先の話だけれど、この教科は成績発表の前に成績不良の生徒にのみ教授からメールがくるらしい。メールがきた生徒はメールに記載された課題を提出すれば、赤点を免れることができるという仕組み。だいぶ優しいというか面倒見のいい教授だけれど、そのメールは生徒にとって恐怖のメールだ。

 そして、そのメールが俺のもとに来たのかというと……


「メール、きませんでした!」

「お、おめでとう梓乃ちゃん〜!!」


 こなかった。俺は無事、赤点をとらずに済んでいたみたいだ。俺の言葉に彰人も喜んでくれたみたいで、ぎゅっと抱き着いてくる。

 俺のマクロ経済学の苦手っぷりを知っていた彰人だから、ここまで喜んでくれているんだと思う。こうして祝ってもらえると嬉しくて、俺も彰人のノリに合わせて抱きしめ返した。


「うおっ、梓乃ちゃんのぎゅっ、可愛いね」

「可愛いとかいらない」

「ついでにちゅーもください!」

「何言ってるの?」


 パッと彰人から離れれば、彰人は残念そうに唇を歪めた。でも、またすぐにだらしない笑い方をして、俺の肩を叩いてくる。


「よかったね、花火大会行けるじゃん」

「花火大会、いくの楽しみだー」

「いやあ、本当は俺が梓乃ちゃんと行きたかったんだけどなあ。残念残念」

「そうなの?」

「んーん! ひとりごと〜


 ともかく、花火大会は無事いけることになった。たぶん目に見えてうきうきしていたのか、よく事情をわかっていないすれ違った友達も「よかったねー」なんて言ってくる。

 とにかく、俺は花火大会の日が楽しみで仕方なかった。



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