甘い恋をカラメリゼ | ナノ
 cinq

 学校から帰ってきて、俺はばたりとベッドの上に倒れこむ。今日は講義が終わったあと、彰人と一緒に暗くなるまでずっとテスト勉強をしていた。問題の教科は暗記してやろうと頑張ってみればそれなりにできて、あと数日もやれば範囲の分は終わりそうだ。

 ここ数日、智駿さんと連絡をとっていなかった俺は、急激にさみしくなって智駿さんに電話をかけてみる。あんまりにもテストに追い詰められて、智駿さんに連絡をとる心の余裕もなかったのだ。久しぶりに智駿さんに電話をかけるということで、俺の心はうきうきと跳ね始める。

 1コール、2コール……少し待つと『はい』と智駿さんの声が聞こえてきた。


「あっ、もしもし、智駿さん!」

『梓乃くん。お疲れ様。テスト、調子はどう?』

「ふ、普通です!」


 勉強疲れで悶々としていた頭が、智駿さんの声をきいた瞬間にすっと晴れる。いつの間にか自分のほおが緩んでいるのを感じた。


「智駿さん! たぶん俺テストいけます!」

『ほんと? それはよかった』

「どうしようかと思ってたんですけど、ひとまず安心かなって。ほっとして電話かけちゃいました」

『うんうん、僕も安心した』


 耳元で智駿さんの笑う声が聞こえてくる。相変わらず、智駿さんの声は柔らかい。生で聞いても電話越しで聞いても、すごく落ち着く。俺はベッドにごろごろとしながら会話を続けた。

 とりとめのない話をぐだぐだと数分。智駿さんの体温を感じられないのはやっぱりさみしいけれど、声を聞いているだけでも幸せだ。智駿さんの微かな吐息とか笑い声とか、そんな音たちにどきどきする。


「智駿さん。早く会いたいです」


 柔らかい声と布団のぬくぬくとした感じにぼーっとしながら、囁いた。こうしていると、ああ、自分は恋をしているんだなぁって、実感する。


『僕もはやく会いたいよ』


 智駿さんの言葉に、いまだにきゅんきゅんする。しばらく付き合っていると慣れがでてくるものだと思うけれど、俺はずっときゅんきゅんしっぱなしだ。こうして愛を語らうと、きゅーっと胸が締め付けられて全身が熱くなる。


「智駿さん……」


 触って欲しい。抱きしめられながら、言われたい。布団の中が自分から溢れてくる熱で、どんどん温かくなってくる。


『梓乃くん?』

「はい……」

『どうしたの?』


 この前、言われた。一人エッチをするときの声を聞かせてね、って。まさか本当にやるわけ……って思ってた。でも、今、俺は……したいってすごく思っていた。智駿さんの声を聞いていると、身体の芯がぐーっと熱くなってきて、触られたくてたまらなくなるのだ。


「あの、智駿さん……」

『ん?』

「あの……」


 ただ、あれは、冗談かもしれない。本当に電話越しに一人エッチなんてされたら、智駿さんどう思うかな。すっごくむらむらしてきてエッチなことをしたくてたまらなくなってくるけれど、やっぱり声は聞かせられない。

 智駿さんの声を聞いていると身体のきゅんきゅんが激しくなってきて、どんどんエッチな気分になってきちゃうし……一旦電話を切ったほうがいいかも。

 そんな、ろくでもないことでうんうんと悩んでいたときだ。スピーカーから、楽しそうに笑う智駿さんの声が聞こえてきた。


『いいよ、梓乃くん』

「えっ」

『したいんでしょ。そのまま、していいよ』

「な、ななな、えっ」

『梓乃くんがエッチな気分になったときの声、わかりやすいからね。いいよ、きいているから、してごらん』


 かあーっと顔が熱くなった。

 まさか、声だけでバレるとは。

 エッチな気分が声に出るだなんてなんて思ってもいなかったから、咄嗟に否定もできずに俺は黙りこくってしまう。一人エッチしたいなんて気分がバレてしまうのはすごく恥ずかしいのに。

 沈黙は肯定、なんてよく言うもので、もう完全にする雰囲気だ。智駿さんは俺が始めるのを待っているのか黙っているし、俺ももう引き返せないし。


「あ、あの、俺本当にそんなに声だしませんからね!」

「うんうん、了解」


 ここは、俺の部屋。もちろん他の部屋には家族がいるわけだ。やっぱりスリルがある。

 もうやるしかない、そんな感じになって、俺は意を決して智駿さんからもらったオモチャをベッドまで持ってきた。それらを枕元に置いて、頭まで布団を被る。


「あ、あの……し、します、よ?」

「うん、どうぞ」

「……なにしましょうか」

「お好きなように」

「し、指示を……!」

「えー? じゃあ、乳首触ってみて」


 ドキドキしながら、俺は智駿さんの言う通りに手を服の中に突っ込んだ。

 俺、一人エッチのときは智駿さんに触られるときほど感じないし声もほとんど出さないんだけど……そう思いつつ、人差し指の腹で乳首の先っぽをすり、と擦ってみる。


「……ん、」


 じわ、と乳首が熱くなる。やっぱり、智駿さんを感じているときは、一人エッチでも感じられるっぽい。スマホを置いて、両方の乳首をすりすりとしてみれば、下腹部がきゅんきゅんと疼きだして気持ちいい。


「は……は、ぁ……」

『気持ちいい?』

「きもちいい……」

『もうちょっと強くいじってみて』

「んぁっ……」


 布団の中に、自分の吐息が響く。今度は乳首を摘んできゅうきゅうと指に力をいれてみる。そうするとぐーっとアソコが熱くなってきて腰が勝手に浮き上がった。布団の中でのけぞって、俺は目を閉じて小さく声をあげる。


「あー……」

『イクまでそのまま触って』

「あっ……あ……」


 一人エッチで乳首イキ、できるかな。

 俺は智駿さんの言うとおりイけるように、乳首の刺激を強めた。ぎゅって乳首を根本から引っ張って、こりこりと激しく転がす。はあ、はあ、って自分の息がどんどん荒くなっていって、それを智駿さんに聞かれているのかと思うと興奮して、どんどん感じてしまう。


「んっ……いくっ……」


 しばらく乳首をコリコリし続けて、びくびくって身体が震えて、俺は乳首オナニーで達してしまった。自分で乳首をいじってイッてしまった恥ずかしさよりも、智駿さんの言うとおりにできたことの満足感がすごい。

 はー、はー、って息をしながら、俺はスマホをちらりとみる。画面に、『智駿さん』の文字。なんだか名前をみただけてドキッとしてしまう。


『あ、自分で乳首触ってイケたんだね。すごいね、梓乃くん』

「……俺イッたの、電話越しで、わかります?」

『もちろん。梓乃くんがイクときの声、僕何回聞いていると思ってるの』

「へへ……そっか……そうですね」


 智駿さんは、俺の身体の全部を知っている。それが、たまらなく嬉しい。

 ぽかぽかと火照る身体で寝返りをうって、うつ伏せになる。スマホを手にとって耳に押し当てて、にやにやとしながら俺は智駿さんに話しかける。


「……智駿さん。下、いじっていいですか?」

「ん、今度は自分からやるんだ」

「……俺の声、聞いていて欲しくて」


 少しだけローションを手にとって、そのままお尻に持っていく。智駿さんが俺のイク時の声がわかるって聞いて、もっと声を聞いていて欲しいって思ってしまった。

 つぷ、と指がなかにはいっていく。そして、根元まで挿れてゆっくりと掻き回す。久々に自分のなかに指を挿れた……締め付けとヒクつきがすごかった。こんな身体にしたのが智駿さんだと思うと、ゾクゾクとしてしまう。


「あっ……」

「音もっとたててみて?」

「はい……」


 スマホをお尻に近付けて、そして指の抜き差しを激しくしてみた。布団のなかでくっちゅくっちゅといやらしい音が響き出して、俺自身興奮してしまう。腰をゆらゆらと揺らしながら、智駿さんに聞いてもらえるようにどんどん音を激しくしていった。


「んっ……んっ……」


 ぐちゅぐちゅとなかをいじくりまわしていれば、触ると気持ちいいころを発見する。ああ、ここが俺のイイところだ、ってわかれば、俺はそこを重点的に責めてみた。そうすればふわふわと下腹部が熱くなっていって、下半身が収縮しだす。腰がどんどん浮き上がっていって、また、あっさりと絶頂がみえてきた。


「……ッ、イクッ……あっ……」


 手で口を押さえながらも、声を出してしまう。ビクビクッ、て身体が小さく震えて頭の中が真っ白になる。何度経験しても、お尻でイクのは気持ちいい。智駿さんにイかせてもらうのと違うのは、一人でイクと余裕があって、ふわふわとした気持ち良さを堪能できること。息が落ち着くまで目を閉じて、スマホを耳に当てる。


「ちはやさん……ちゃんと、きいててくれた?」

「うん……すごかったね」

「ちはやさん……つぎ、おもちゃ……使います」


 智駿さんの声を聞いていると、イったばかりのお尻の穴がきゅーっと締まる。気持ちいいな、ってぽーっとしながら手を伸ばして、枕元のバイブを掴んだ。


「は……」


 スイッチをいれる。そうすると、ブーンとモーター音がなり始めた。布団を被ればそのモーター音は卑猥に響いてゾクゾクとしてくる。目の前で、可愛らしい色をしたゴツいバイブが、うねうねとうねりながら回転をしている。


「んっ……」


 バイブの先っぽを胸にあてる。乳首のまわりをくるくると撫でていくと、乳首が触って欲しそうにふるふると震えた。自分で自分を焦らして、そして一気にぐっと乳首を潰すように押し当てる。智駿さんにいつもされるように、焦らして焦らして一気にイかせるやつを、やってみた。


「んぁっ……」

『どこにバイブあてたの?』

「ちくびです……あっ……」

『自分でバイブを乳首にあててるんだ。やらしいね』

「はい……」


 身体を丸めて、バイブで乳首をいじめながらお尻の穴をほぐしていく。この、智駿さんのくれた太いバイブが奥までずっぽりはいるように、しっかり慣らさないと。指三本をぐちゅぐちゅと激しく抜き差しをしていけば、欲しいって気持ちがどんどん高まってゆく。


「あっ……ちはやさんっ……いれます、バイブ、なかに、いれます……」

『僕の名前呼びながら挿れて』

「ちはやさんも、俺のなまえ、よんでてっ……」


 十分に柔らかくなったお尻の穴から、ちゅぽ、と指を引き抜いて、すぐにぐっとバイブの先っぽを穴にあてた。ぶーん、と振動がなかまで伝わってきて、なかがきゅうんっとする。穴はバイブに吸い付くように激しくきゅうきゅうとしていて、とにかく欲しがっていた。


「ちはやさんっ……は、ぁッ……」

『梓乃くん』


 名前を呼んで呼ばれて、それと同時にバイブをなかに挿れていった。智駿さんの声が、俺の記憶を呼び覚ます。いつもどろどろに甘く甘く抱かれているときの記憶がフラッシュバックして、バイブがずぶぶとはいってくると同時に俺は仰け反った。


「ちはや、さ……」

『かわいい、梓乃くん。もっと僕の名前を呼んで』

「ちはやさん……あっ、……ちはやさん……」


 でっかい凹凸がなかでぐりぐりと回転して、俺のイイところをごりごりと擦りあげる。太くて大きな先っぽは奥の方で強烈に震えて俺をどんどん責め立てる。


「ちは、っ……あっ、ちはや、さ……」

『もっと奥にぐりぐりしてごらん』

「あぁー……腰、くだけちゃ……」

『気持ち良さそうな声だね。可愛いよ、梓乃くん』


 バイブの持ち手をぐっと押し込んで、奥をぐいぐいと刺激する。つま先がぎゅっと丸まって脚全体がかたかたと震えて、またすぐにイきそうになった。

 抑えようと思っても、息がどんどん荒くなっていって、はあはあと声にでてしまう。バイブの凹凸がごりっと俺の前立腺を擦るたびに「あっ」って声が漏れてしまって、俺の「一人エッチのときは声をださない」宣告は全くの嘘になってしまった。

 流石に家族に聞こえてらマズイかと、布団の中でギリギリ聞こえる程度の声には必死に抑えているけれど、一人エッチをするときにしては俺は喘ぎすぎだと思う。

 でも、だって、仕方ない。智駿さんが電話越しであっても俺の名前を呼んでくれているんだから。そんななか一人エッチしたら感じまくってしまうに決まってる。


「はっ……はぁっ……」

『梓乃くん、かわいい』

「もっと……きいて……」


 バイブを抜き差ししはじめると、布団の中にくちゅくちゅと音が響く。自分で太いバイブを抜き差ししてわかることだけど、俺のお尻の穴、柔らかい。簡単にバイブを呑み込んでくれる……けれど、引き抜こうとすると吸い付いてくる。智駿さんにたっぷりと開発されて、智駿さんを受け入れられる身体になっているんだなあって思った。

 夢中になってバイブを楽しんで、何回もイクことができた。イクたびに「あっ……」って満足感に満ちた声がもれて、その度に智駿さんが笑ってくれる。イッてもイッてもまだまだ欲しくて、俺はとろとろになりながら智駿さんに声を聞かせる。


「あっ……あぁ……ちはやさん……んぁ……」

『すごい、いやらしい、いいよ梓乃くん』

「ちはやさん……!」


 もう、すごく、イイ。こんなに一心不乱に一人エッチしちゃうなんて、俺、ヤバイ……そう思うけれど止まらない。腰もゆさゆさと振って、バイブもすごい勢いで抜き差しして。


「あぁーっ……ちはやさん……!」


 しばらくイキ続けて、ようやく一番大きな波に、呑み込まれた。


「はぁ……ちはやさん……」


 ぱた、と横になって、ぼんやりと智駿さんの名前を呼ぶ。ああ、すごく気持ちよかった。内もものぬるぬるとしたローションの感触が事後って感じがして、イった後の俺はなんだか満足感を覚える。


『梓乃くん、可愛かったよ。僕も興奮した』

「……ほんと、ですか……うれしい」


 智駿さんの口から「興奮した」って言われると、すごく嬉しい。あんな、物腰柔らかなでふわふわとした雰囲気のパティシエさんが、俺の痴態に興奮してくれる。俺だけの、智駿さんって感じがして心が満たされる。

 こんなに胸がいっぱいになる一人エッチは初めてだ。電話越しに名前を呼ばれて「可愛い」ってたくさん言ってもらえたし、十分に智駿さんと繋がっていた。


「ちはやさん……こんど、またしていい?」

『もちろん、いいよ。もっと梓乃くんのいやらしい声、聞きたい』


 会えなくて寂しいけれど、これでなんとかその期間を乗り切れそうだ。もちろん、実際に会いたいけれど、この寂しさは今度ちゃんと会えるために味わっている。頑張ってテストを乗り越えて、そして智駿さんと無事花火大会にいく。

 それから、ほんの少しぽそぽそと会話をして、今日の智駿さんとの電話は終了した。明日からもまた、勉強がんばろう……そう思って俺は目を閉じる。



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