▼ quatorze(3)
「んっ――ふ、ぅっ……」
その瞬間、つぷ……と指がなかに入ってきた。根元までずぷっと入れられ、奥のほうを指先でくりくりとされる。
「んんっ、んっ、んんー……」
ああ、きもちいい……
びくんっ、とお腹の中が収縮した。それから、びくんびくんと小さく震え出す。あ、イッてる、イッてる……俺、イッてる……そんなことを自覚しながら、目を閉じて……俺は、白柳さんに完全に実を委ねる。
「あっ……」
「すげえなあ……おまえのなか、柔らかいのにすんげえ締め付けてきて」
「あっ、そこ、……そこ、イク、イク……」
「んー、セラはこっちに夢中だな。ほら、いっぱいイけよ、セラ」
「あっ、あぁあーっ……だめっ、あぁー……!」
ぷちゅぷちゅと指でなかをかき回されて、なかが蕩けてしまった。こんなにとろとろに気持ちよくなったのが初めてで、わけがわからなくなってしまう。ぎゅっと白柳さんにしがみついて、自分のものとは思えないような声をあげて、俺はひたすらにイかされ続けた。
「あぁん、あぁっ、あぁあっ、」
「はあ、すげ、前、全然いじってないのに、おまえのびしょびしょ」
「しらやなぎさんっ、いっちゃう、いっちゃう、いっちゃうっ」
「んん、もう何度もイッてるだろ、セラ、ほら、ここ触るとイクんだもんな?」
「あぁっ、いっ――イクッ……、あっ……」
「ふふっ、大丈夫かあ、おまえ」
「はぁっ、あっ、しらやなぎさん、……ぅう、しらやなぎさん……おれ、おれぇ……」
もう何の液なのかわからないくらいに、俺の下半身はぐっしょり濡れていた。前戯でここまで感じたのは初めてで、俺も自分自身が何を言っているのかがわからない。泣きながら白柳さんにすがりついて、ただ、頭の中に、胸の中に、ぼうっと浮かんできた言葉を唇で紡ぐ。
「すき、しらやなぎさん、すき……ねえ、しらやなぎさん……ずっと、ずっと……すき、だったんです、……」
「……、」
「あ、っ……、う、……」
ぐ、と身体が締め付けられるような圧迫感を感じた。いつの間にか、なかから指は引き抜かれていて、両腕でぎゅうっと抱きしめられていた。
「は、……は、……」
ゆだるような熱が少しずつ全身に馴染んでいって、とくんとくんと鼓動するように静かな絶頂が身体の中にうずまいている。ただ抱きしめられているだけなのに、たまらなく幸せで、息をするのが苦しくなるくらい胸が痛くて、こんな不思議な心地よさは初めてだ。
「俺もなあ、結構長いことおまえのこと好きだったんだぜ」
「……ふ、……ぇ?」
「おまえがめんどくせえヤツだから、ほっといてやったけどよ」
「おれ、べつにめんどくさくないよ……」
「ウソつけや、おまえほどめんどくせえやつ初めてみたわ」
「ええ〜……」
ああ、この軽口。この人は甘い言葉を言えない男なんだろう。そんなところがカワイイと思うけれど。
白柳さんの顔が見たくなって、そっと顔を上げる。少し、身体が熱くてくらくらする感じは落ち着いた。胸はどきどきしっぱなしだけれど。
目が合って、息をするようにキスをする。すぐ放して、重ねて、放して、また見つめ合う。
「……めんどくさい俺のこと、ずっと好きでいてくれたんだ」
「……チッ、そうだよ、悪いかよ」
「……ううん」
うれしい――そう唇から零れて、自然と頬がゆるむ。白柳さんはハッと息を吐いて苦笑して、またキスをしてきた。今度は長いキス。
白柳さん、俺はね。愛ってものがよくわからないんですよ。俺の知っている「愛」って呼ばれる行為は、ぐちゃぐちゃで、痛くて、辛くて、苦しいもので、だから「愛」ってそういうものだと思っていたんですよ。
あなたが俺の人生の中に現われて、いきなり「愛」の定義を変えられたから困っているんです。いきなり幸せを教えられて困っているんです。俺の今までの人生はなんだったんだろう――そんな風に思っちゃって、少し怖くなる。俺にとって、優しいものに触れるのは怖いことなんですよ。
幸せになるのが怖いなんて気持ちは、あなたは知らないでしょうけれど。そんな俺が、あなたの手を取るまでにどれほど葛藤したのか、あなたは知らないでしょうけれど。
「なあ、セラ……あんまり泣くなよ」
「……白柳さん、」
今、俺はあなたの隣にいる未来が見えているんです。未来が見えたのなんて、初めてです。
「――大好き」
は、と照れたように、困ったように、かみしめるように、白柳さんが笑う。こつ、と額を合わせて、ついばむようにキスを続けた。白柳さんとこうして甘いやりとりを繰り返すのは、気恥ずかしいようで慣れないけれど、それでも嬉しくてたまらなくて、ついつい夢中になってしまう。
ゆるゆると、とろとろと、心の中が蕩けていくような気持ち。こんなにも穏やかで甘ったるいセックスは初めてだ。それでも……じゅわじゅわと広がってゆく快楽はあるわけで。白柳さんがキスをしながら腰をすり合わせてくるので、下腹部がぐずぐずに熱くなっている。
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