甘い恋をカラメリゼ | ナノ
 trois



「梓乃くん? しーのくん?」

「はっ」



 いつものように智駿さんの家でごはんを食べているとき。俺の意識はどこかへ飛んでいってしまっていた。あんまりにもぼーっとしていたものだから、智駿さんが苦笑いをしながら俺に声をかけてくる。



「最近、どうかしたの?」

「えっ? いや、別に……」

「そう? なんだか僕といっしょにいても上の空というか……」



 智駿さんはやっぱり……鋭い。俺が自分の将来のことばかりを考えて、「今」に手がつかなくなっていることに感づいている。そう、最近の俺は、将来のことばかりを考えてしまっているが故に、今、自分がやっていることが俺の未来に繋がることなんだろうか……なんてことばかり考えていた。俺が今やっていることは、正しい? 俺はこのままでいいの? そんなことばかりを考えてしまっている。



「……梓乃くん?」

「えっ、あっ、ごめんなさい、またぼーっとしてた……」

「……も、もしかして……僕のこと避けていたりする?」

「し、してないですよ!?」

「……ずっと僕の目をみてくれないから……」



 そんな俺を、智駿さんがなんだか寂しそうな顔で見つめてくる。あれ、俺……智駿さんに、寂しい想いをさせてしまっている?



「梓乃くん……?」



 なんだか俺……空回りしているような。智駿さんにこんな想いをさせてまで、俺は何をこんなに悩んでいるんだろう。

 俺の顔を覗き込む智駿さん。心配そうな瞳に、罪悪感を覚える。……情けなくて、ごめんなさい、智駿さん。



「……智駿さん、俺、ちょっとしばらく一人にさせてください」

「えっ、会わないってこと?」

「……このままだと、智駿さんに嫌な想いをさせちゃいそうで……」



 この状態で智駿さんに会っていても、智駿さんに不安な想いをさせるだけなような気がする。それなら、きっちり自分の中の悩みを解決してから、笑顔で智駿さんに会いたい。そう思った。

 でも、智駿さんは困ったように笑っている。なんだか……今も、智駿さんのことを傷つけている気がする。



「……違うんです、智駿さんに会いたくないわけじゃなくて。俺、自分のことで精一杯で、わけわかんなくなってて……」

「うん、そっか。たまには、離れてみるのもいいかもね」

「……はい」



 智駿さんがぽんぽんと頭をなでてくれた。

 泣きそうになった。


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