甘い恋をカラメリゼ | ナノ
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 さすがに二日連続俺の家にくるということはなく、俺がバイトに行く時に彼とはお別れした。もう会うことがなければ平和なんだけどなー、なんて思っていたけれど、なかなか上手くはいかないものだ。

 いつものように終電に間に合うころにバイトをあがって、駅に向かって歩いて行く。このくらいの時間になると、水商売の人たちが町にあらわれて、客引きをしている様子がちらほらと見られる。そういうことをしている人たちってみんなモデルみたいに綺麗だよな〜とぼんやりと彼らを眺めながら歩いているところで――まさかの、セラをみつけてしまった。

 セラはラフな服装をして、ふらふらと歩いている。いかにも水商売です、という格好はしていなくて、周りを見渡しながらじっくりとターゲットを定めている様子だ。天然ではあるけれど、そういうところはさすがのナンバーワンというところだろうか。

 俺はセラに見つからないようにこそこそと人混みに隠れながら歩いて、駅まで早足で向かっていく。そろそろセラの視界に入らないあたりかな、と思った辺りで、思わぬものを目にしてしまった。



「あっ……」



――智駿さんと、白柳さん。飲み屋から出てくるところらしい。二人はタクシーの並んでいるところに向かって歩いているけれど……そこは、セラの視界に入るところ。

 セラは、二人をあっさりと見つけてしまった。俺はうわっとなりながらも、こっそり影に隠れて三人の様子を覗いてみることにした。堂々と声をかけて止めればいいんだけど、なぜか俺はこうして尾行のようなことを始めてしまう。



「わあ〜こんにちは!」



 セラはにこにこと笑いながら二人に話しかける。人懐っこい笑顔を浮かべるなあとヒヤヒヤしていれば、智駿さんがニコッと笑う。



「ああ、こんにちは。梓乃くんのお友達だっけ?」

「はいっ!」



 へへへ、とセラが智駿さんにすり寄った。その時点で俺は殴り込みにいこうと思ったけれど、寸のところで堪える。ここで飛び込んでいって面倒ごとになるのは避けたい。今は白柳さんも一緒にいるし、そんなに大変なことにもならないだろうから。



「おー、誰だぁ、こりゃまたずいぶんと美少年だな」

「セラです! 夜のお仕事してます!」

「へえ、夜のお仕事。そんな子と友達とか、また梓乃くんも不思議な縁がある奴だな」



 セラは白柳さんにもついっと寄っていく。俺や彰人に向けた目と同じ目をしている。またこの人とエッチしたいとか考えているんだろうけれど、……様子を見る限りはやっぱり智駿さんのことが気になっているらしい。セラは二人を交互に見つめて、小首を傾げる。



「あのー、これからの予定は?」

「帰るところかな」

「そうなんですか! 俺のお店にきません?」

「セラくんの?」



 急に誘い始めたぞこいつ、とびっくりしてしまった。ただその誘い方はズルいぞ……と焦る。だって、二人は「セラが夜のお仕事をしている」ということしか知らない。普通なら、それを聞いたらホストかな、と思うだろう。店にきませんか、と聞かれてもホストクラブにきませんか、と聞かれているように感じると思う。

 案の定、二人はセラの誘いに興味を示し始めてしまった。俺だってちょっとホストクラブは行ってみたい。テンションの高いイケメンに囲まれるのは楽しそうだ。



「え〜、私はいいけどォ。まだ日も変わってないし」
「あんまりそういうお店慣れてないけど……まあ、いいかもね」



 白柳さんは完全にホストクラブに行きたがってるし、智駿さんは俺の友達という設定のセラに気をつかっているのか行こうとしているし……本当に行ってしまう流れだ。

 俺が止めるべきなんだろうけれど、セラの店がどんなものか気づいたときに、智駿さんの口から断ってほしいという思いもある。自分めんどくさいな、と思いつつ、俺はなんとか飛び出したい衝動を耐え抜いた。

 三人が路地の奥に向かって歩き出したから、俺はこそこそと後をつけていった。



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