『会長って、彼女とっかえひっかえなんでしょ?』
『ね〜! 神藤先輩、昔はそんな感じじゃなかったと思うけど』
『冬廣さんが卒業したあたりからなんかヤバくなったよね』
『でもぶっちゃけ神藤先輩にならヤリ捨てられたいかも』
『なにそれ〜! あ〜、でもわかるかも!』
高校時代、狂ったようにセックスをしていたような気がする。相手が男だろうが女だろうが気にしなかった。
自分を壊してしまいたかったのだ。全てを捨てたかったのだ。ほんの少しでも、あの人の残り香が漂う思い出を残していては、決心が鈍ってしまう。うつくしいものは全て、燃やしてしまいたかった。
『おまえ、それ病気だよ』
一人だけ、強く心配してくれた人がいる。神藤は――彼のことが、苦手だった。心から慕っていたが、心から嫌っていた。全てを見透かすその瞳が、屈辱的だったから。
「――沙良くん」
「……、うん?」
「どうしたの、ぼーっとして」
――セックスが終わると、いつも考える。なぜ、自分はこんなことをしているのだろう。いつ止められるのだろう。いつになったらおわるのだろう。
ぼんやりと考え事をしていた神藤を心配した梨瑚が、声をかける。梨瑚はぽやっとしたかすれ声をしていて、手足に力が入らないのか神藤にぺったりと体を寄せている。無理もなかった。初めてなのに、神藤に散々絶頂を教え込まれたのだから。彼女の姿に、神藤はやりすぎてしまったと反省したが、セックスをするといつも我を忘れてしまう。これはどうしようもない。
「……からだ、大丈夫? ごめん、無茶させちゃった。それが心配で」
「えっ……? あ、うん、私は大丈夫だよ。……びっくりしちゃった。友達が、エッチはだるいし痛いってずっと言ってたから……こんなに、すごいなんて思わなかった」
「梨瑚さんが可愛いから、思いっきり責めちゃった。本当に、ごめん」
「そっ……、そんな……、」
純情に顔を赤らめる彼女に、胸が痛む。
こんなひとでさえ自分は大切にすることができないのかと、神藤は自分に呆れた。自分の胸に、しまっておけないのかと。その強ささえ持ち合わせていないのかと。全てを壊してしまわなければ狂ってしまうくらいに、神藤は手遅れだった。
「さ、沙良くん」
「……うん」
「……はじめてが沙良くんで、よかった。ありがと」
どうか、彼女に幸せになって欲しい。
梨瑚が傷ついていることが手に取るようにわかって、神藤は自分を責めることしかできない。誤魔化すように彼女の幸せを願う自分が、憎かった。