26


 時々、夢を見る。抜けるような青空の中を、一羽の青い鳥が羽ばたいている。それがとても綺麗で、美しくて……私は思わず手を伸ばす。



「どうした」



 そんな私の横で、エリス様は笑う。



「……いいえ」



 くすくすと吹き出すエリス様は、窓の外に乗り出して言うのだ。



「――綺麗だな、空」

「……ええ……とても」



 青空の光を浴びて微笑むエリス様に私の胸は乙女のようにトクンと高鳴って。そのまま口付けられれば、ふわりと淡く鮮やかな不思議な香りが鼻を掠める。ふと目に飛び込んできたのは、窓枠に降り立つ青い鳥。

 ああ、これが空の香り。



「エリス様……」

「うん?」

「好きです」

「……ああ、俺も……愛している」



 きっとこの幻は、私が手に入れたくても手に入れられない、願い事。青い鳥が見せてくれた、優しい幻想。
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