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 ビク、とラズワードが体を震わせる。ハルは立ち上がると、ゆっくりとラズワードに近づいてきた。思わずラズワードが後ずされば、ハルは苛立たしげに眉をひそめる。


「怖いの?」

「……、あの、」

「暴力はふるわないから、安心してよ」

 
 怖いか――そう問われれば、正直なところイエスだ。しかし、ハルがこうなってしまった原因は自分にあるので、ラズワードはうなずけない。

 ハルはラズワードが拘束されているベッドの端に腰掛けた。そして、ポケットから注射器を取り出し、ラズワードの腕を掴む。


「ハル様、それは、」

「媚薬」

「媚薬っ……!?」

「大丈夫、ちょっと強いけど、死にはしないからね」

「まっ……待ってください、ハル様――あっ、」


 ラズワードが制止の声をあげようとも、ハルは容赦しなかった。ためらわずにラズワードの腕に針を刺し、薬を注入する。

 ただただ、恐ろしく感じた。媚薬は、施設にいた頃に使われた経験がある。媚薬を使われると、快楽なんて感じない。ただ苦しいのだ。断続的に強力な快楽が襲ってきて、体力を根こそぎ奪われる。寝る間もなく押し寄せる波のような快楽に責められ続け、あまりの苦しさに死にたくなる。ラズワードの知っている媚薬とは、そういうものだった。

 施設にいたころを思い出し、ラズワードの体がガタガタと震え始める。そんなラズワードを見て、ハルはハハッと疲れたように笑うだけだった。


「あっ、……う、」


 ゾワ、と背中に悪寒が走った。そして、その感覚に連動するように、全身の細胞が震えるような微弱な快感を覚える。ラズワードはわけがわからなくなって、たまらず身体をひねった。シーツに肩と腰骨がズリッとこすれると、今度はそこがゾワゾワとしびれるような感覚に見舞われる。


「あ――……」


 シーツに擦れた肌が、快楽を拾ってしまっているのだ。身体をひねれば、擦れた肌から全身に快楽の電流が走る。それなら動かないようにとじっとしていても、心臓の鼓動に合わせてわずかに震える身体は、静かにもどかしい快感を得てしまう。


「は、はるさま……」

「うん? どうしたの、ラズ」

「か、からだが、」

「身体が?」

「つ、つらい、です……」

「どんな風に?」


 ハルは目を細め、ゆっくりと視線でラズワードの全身を舐める。もじもじとこすり合わせられる太もも、ヒクヒクと震えている腹、浅い呼吸で上下する胸。ラズワードの身体に媚薬が効き始めているのが、見て取れる状態だった。


「やっ……」


 ハルが指先でラズワードの胸を触る。つうっと指の腹を滑らせるようにして、ゆっくりと円を描くように乳首の周りを撫でた。

 乳首がぴんと勃って、ふくらむ。敏感になったそこは空気が触れる感覚すらも拾って、ひたすらにラズワードに切ないもどかしさを与え続けた。

 ハルは一向に乳首の膨らみには触れない。乳輪だけをくるくると触るだけで、ぷくりとふくらんだそこには触れてくれなかった。全身の肌で仄かな快楽を感じ続け、焦らしに焦らされたラズワードは、辛くてたまらなくて、懇願するようにハルを見上げる。


「はるさ、ま……はるさま、も、……おねがい、」

「何を?」

「さわって、ください……」


 ふ、とハルが微笑む。

 ハルは脚を組んで、微笑みながらラズワードを見下ろした。柔らかい笑みを浮かべているのに、その表情はあまりにも冷たい。

 
「自分で俺の手に擦りつけてみなよ。ほら、見ててあげるから」

「……っ、」

 
 彼の様子がいつもとはあまりにも違う、とラズワードはいやというくらいに感じ取っていた。しかし、身体がもう限界だ。ラズワードはハルに冷たく見下ろされながら、ゆっくり、身体をゆらす。


「あっ……!」


 身体を軽く浮かせ、揺らし、自ら乳首をハルの指に擦りつける。なかなか触れて欲しい場所に当てることができず、身体を何度も揺らしたが、本当に欲しい刺激がなかなか得られない。いつものように――ぎゅ、と優しく摘ままれて、くりくりとこねられたいけれど、彼はそうしてくれない。何度も身体を浅ましく揺らし、いつもの快楽を求めて、乳首を彼の指に擦り続けた。


「ぁんっ、あっ、あぁっ、あっ」

「……いやらしい。本当に、気持ちいいことが好きなんだな、ラズ」

「っ……ハル、さま、ぁっ……ぁんっ……」

「だから……セックスが上手なノワールのことが好きになっちゃったのかな?」


 ハルがずし、とラズワードの身体にのしかかった。ラズワードはそれだけでイきそうになったが、なんとか耐える。ハルの言ったことを否定したかった。

 しかし、突然ぎゅうっと両方の乳首をつねられて、ラズワードはビクビクッと身体を反らせながら絶頂してしまう。


「あァッ――……!!」

「身体は正直で素直だね、ラズ」

「ちっ違ッ――あぁっ、だめ、だめっ――……!」

「何がダメなの? 言って」

「いっ、イクッ……イッちゃうっ、からっ、だめェッ――ハルさまァッ――……!」

「やっぱり、気持ちいいことが大好きなんだな、ラズ」

「ち、っ……がっ……あぁっ――!」


 ぎゅっと強く乳首をつままれ、グリグリッとこねくり回される。焦らされてぷっくりとふくらんだ乳首は、そんなことをされれば過ぎるくらいに感じてしまう。ラズワードはハルに身体を押さえ込まれながら、何度もガクガクと震えて昇りつめてしまった。
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