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「あっ……ノワールさんと、ラズワードくん」



 アベルがぱっと顔をあげる。基地に戻ってきたノワールとラズワードを驚いたような目でみていた。



「おかえりなさい! 討伐……できたっぽいですね。さすがです」



 アベルは笑って、ノワールとラズワードに握手を求めてきた。驚いてはいるが、討伐できることを信じていた、といった様子だ。二人に飲み物を渡しながら、労っている。しかし、ルージュの様子はアベルとはまるで違っていた。驚きを通り越して、ショックを受けているような顔をしていたのだ。



「……リリィ? どうした、どこか具合でも悪いのか」

「……いいえ」



 そんなルージュを心配して寄ってきたノワールに、彼女は震えながら、尋ねる。



「……ノワール、……ラズワードは、強かった?」

「……ああ、すごく。彼のおかげで討伐できたようなものだから。ラズワードは、強いよ」

「……」



 穏やかな顔で答えたノワールをみて、ルージュは泣き出しそうに、瞳を震わせる。しかし、ぐっと唇を噛んで、俯いてわずかこぼれた涙をぬぐうと、つかつかとラズワードのもとへ歩み寄った。



「……お疲れ様。あなたのおかげで、無事、魔物を討伐できたわ。ありがとう」

「いえ……力になれて嬉しいです」



 ルージュに手を差し出されて、ラズワードは彼女とも握手をする。しかし、彼女の冷たい笑顔に、どこか寒気を覚えてしまっていた。
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