20

 ミオソティスが連れて行かれる、当日。レヴィは急いでミオソティスの屋敷に向かった。屋敷に着いたそのとき、ちょうどミオソティスが神族たちに連れて行かれるところだった。ミオソティスの父親が、目を腫らしながら神族に頭を下げている。ミオソティスは無表情に、神族に手をひかれていた。

 ここに来るまで、レヴィは神族からミオソティスを奪い返すつもりでいた。連れて行かれる瞬間にミオソティスの手をとって、走って、遠くへ逃げる……完璧だと、思っていた。

 しかし。



「あ……」



 神族を見た瞬間に、脚がすくんだ。黒いスーツを着た彼らは、冷たい目をしていた。そして、形容しがたい、強いなにかを放っていた。レヴィには理解できなかったが、これは天使を圧倒的に凌ぐ神族の強い魔力。レヴィは本能的に、神族に恐怖を感じてしまったのだ。

 レヴィはぺたりとその場に座り込んで、動けなかった。がくがくと震えが止まらない。

 そこで、初めて知った。自分は――弱いのだと。そして、力がない者には……誰も救えないのだと。

 レヴィはミオソティスを呼び止めることすらできず、ただただ連れて行かれるのを傍観していることしかできなかった。悔しさに……涙が止まらなかった。
_177/269
しおりを挟む
PREV LIST NEXT
番外編:表紙 : TOP :
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -