15


「あの、ここって」



 少年がバートラムに連れてこられたのは、聖獣・魔獣の実験体を飼育している部屋だった。大きな牢の一つ一つに、施設の研究によって生み出された聖獣・魔獣が閉じ込められている。バートラムは少年の手を引いて、一つの牢の前に立たせる。



「こいつを知っているか」

「……いえ」

「こいつはな、ひたすらに生殖をして子孫を増やそうとする魔獣を使って作った奴だ。デカイ図体をしてはいるが、攻撃的な性格はしていないし、殺傷能力も低い」



 牢の中にいたのは、3メートルほどある、大量の触手をもつ魔獣だった。全身がぬらぬらと粘液でテカっており、なんとも気持ちの悪い容姿をしている。



「いいか、おまえは私の言うことに逆らってはいけない」

「……は、はい」

「さっきのように私の命令に口答えされたら困るんだ。あれくらいのこと、そつなくこなしてもらいたい――おまえは「ノワール」になるんだからな」

「……お父様……今、なんて?」



 何度も聞いたことのある、その単語を聞いて少年は驚いたようにバートラムを見上げる。しかし、その瞬間バートラムは牢の扉を開けて、少年をその中へ突き飛ばした。



「――ッ!?」

「逆らう悪い子には……お仕置きが必要だな」

「えっ、ちょ……開けてください、まって……お父様!」



 ガコン、と牢を閉める大きな音が、いやに絶望的に響いた。そのまま去って行くバートラムを追いかけるように少年は牢を掴んで叫んだが、バートラムは振り返らない。



「……ひっ」



 そんな少年の背後から、魔獣の触手が腕に絡みついてきた。触手の先からは何やら液体がどろどろと出ていて、気味が悪い。ずるずると触手が服の中に入ってきて、すさまじい恐怖を覚えた少年は泣きながらバートラムの名を呼んだが、ただそれは虚しく響くだけ。



「あ、やだ……あっ、う、」



 全身を這いずり回る触手から、粘液が塗りつけられる。そうすると、徐々に身体が熱くなってきて、経験したことのないような……頭が真っ白になるような、そんな波が下半身から這い上がってきた。



「あっ……やめ、やめて……あッ――ん、」



 誰にも晒したことのない秘部を舐めるように触手の先に撫で上げられて、少年は思わず仰け反る。バケモノに身体を犯されることの恐怖と未知の感覚への混乱で、少年はただただ泣くことしかできなかった。

――その魔獣は、生殖を成功させるために触手から強力な快楽物資を含んだ粘膜を出すのだという。少年を苛める感覚は――絶頂のソレだったのだ。しかし、そんなことを理解できない少年は怯えるだけ。あがってくる息と、熱くなってゆく身体、びくびくと痙攣を始める肢体、怖くて怖くてたまらない。



「やだ、やだ……! あっ、あっ、あぁあ……」



 腕と脚を絡めとられ、少年の身体は宙にうく。臀部を突き出すような格好を強制され、そして挿れる所ではないはずのソコに触手が侵入してきた。



「あっ、あっ……」



 触手の先が細く、粘液で濡れているからか、特別痛みというものはなかった。しかし、内臓を引っ掻き回されるような感覚にすさまじい恐怖を覚えた。ゾクゾクと体中を駆け巡る感覚とそれが相まって、少年の脳内は絶望に支配される。



「助け、たすけて――ンッ!?」



 わけもわからず叫ぼうとすれば、口の中にも触手は入ってきた。ぬるぬると悍ましい液体が咥内に入り込んできて気持ち悪さのあまり嘔吐してしまったが、それでもソレは動きを止めることはない。溢れる涙に視界は歪み、身体が熱くなってきて、何も考えられなくなってくる。



「あ、……う、」



 ぐったりとした少年の小さな身体を、触手は容赦なく貪った。なかに入ったソレが、びくびくと痙攣する。その瞬間、少年はじわりと何かが下腹部を満たしたのを感じた。



「……うっ、ぁ」



 少年の腹を満たしたのは、魔獣の精液だった。この魔獣はターゲットを見つければ孕むまで犯し続ける性格をしている。精液を吐き出した触手を引き抜くと、また別の触手を少年に突っ込んだ。



「あっ……」



 繰り返される不気味な振動、中を掻き回される感覚。少年は抵抗する気すらも失せて、ただ身を触手に任せていた。突かれる苦しさに時々喘ぐことで精一杯だった。



「うっ、う……」



 一本精を吐き出したら、また次の一本。とめどなく注入される精液に腹がいっぱいになってくる。



「た、助け……」



 地獄のようだった。

 嘔吐して、それでも少年の容体に興味などもたない魔獣は少年に精液を注ぎ続ける。強制的に与えられる快楽に少年の身体も頭もついていくことはできず、いうことをきかない体に怯えることしかできず。泣いても叫んでも、誰にも届きやしない。



「あ、あ……」



 すうっ、と意識が遠のいてゆく。頭がまっしろになって、そして、視界は真っ暗になった。
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