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「ほお、課題をちゃんと終わらせたか、これであの書庫にあった魔術書はひと通り覚えたことになるな」

「終わり、ですか? では明日からはなにをしたら良いのですか?」

「まあまあそう焦るな。まだおまえには時間があるからな」



 バートラムは言いつけを守った息子に満足気な笑みを浮かべた。バートラムは毎日膨大な量の魔術書の暗記を少年に命じているが、少年はそれを難なくこなしてみせる。他にも武術などの稽古を受けさせているが、師範からの評価は非常に高い。

 これは、将来とんでもない人間になる。

 バートラムは息子の著しい成長に日々高揚していた。



「今日はもういいぞ、最後にこれを飲んでいけ」

「……あの、いつも思うんですけど……これはなんですか? 飲んだ後少し気持ち悪くなるし……」

「気にしなくてもいい。おまえのためだ」

「……はい」



 一日の終わりに、バートラムはコップ一杯分の液体を飲ませる。味は特になく、飲んだ感じは水となんら変わりないのだが、その水を飲んだ少年はいつも体調を崩してしまう。少年はもちろん飲みたくはないのだが、バートラムの言いつけだからと逆らいはしない。



「明日は飼育場の入り口で待っていなさい。違うことを教えてあげよう」

「……飼育場? わかりました」

「今日はもう部屋に戻っていいぞ。おやすみ」

「……おやすみなさい」



 名前だけは知っていた飼育場。少年はそこに一度も足を踏み入れたことがない。特に禁止されていたわけでもなかったが、いきたいと思えなかったのだ。そこへ、明日いかなければならないと、そう思って少年はなんとなく憂鬱になる。ため息をついて、少年は部屋を出た。
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