「常葉さんのところでいいかな……?」
要さんはさておくにして、常葉さんは4人の中で一番落ち着いているから安心感があった。自警団長をしていると言っていたし、万が一何かがあっても大丈夫だろう。
それに、彼の家は広いらしい。だったらお互いあまり気を使わずに生活出来るのではないか?というちょっとした下心もあって出た結論だ。
マスターに伝えると、彼はにっこり笑って頷いた。
「勿論だよ。それじゃあ、常葉くんに挨拶しに行こう!」
私の腕を掴み、足取り軽く進み始めるマスター。向かう先は、食事を終えた常葉さんが飲み物片手に休んでいるソファだ。
「常葉くーん」
「どうした、マスタァ殿」
「小春ちゃんを常葉くんに預かってもらうことにしたから、よろしくー」
「…………」
「ほら、小春ちゃんも」
「よ、よろしくお願いします……!」
物凄く軽いノリで告げたマスターに呆気にとられつつ、ぺこりと頭を下げる。
唇を薄く開いて固まっていた常葉さんは、それから3秒ほど経ってからようやく第一声を発した。
「マ、マスタァ殿……。それに君も……」
「なぁに?」
「先程も言ったが、こういうのはどうかと思うぞ?期間限定とはいえ、若い男女が一つ屋根の下で暮らすなど…」
「でもさぁ、小春ちゃんが4人の内誰かと一緒に暮らすのはもう決定事項なんだから。僕は、常葉くんなら安心なんじゃないかなーと思うんだけど?」
「それは……」
店内にいる他の3人へちらりと視線を送り、溜め息のような曖昧な吐息と共に常葉さんは苦笑する。
それだけで、マスターは彼の意向を察したようだった。
「ってことで、お願いね」
「……分かった。私が彼女を責任持って預かろう」