目を覚ました。
「…ちっか」
宮の視界を目覚めて早々埋めているのは、ヒヨの口元。小さく開いたそこから、すうすうと安らかな寝息を立てている。視線をずらして壁掛け時計を確認すると、まだ午前二時だ。少し体をくねるようにしてヒヨから離れて、その顔全体を見る。二十歳はとっくに超えているが、未だ十代後半に見えるその童顔は眠っていると更に幼く見えた。
二人が埋もれている布団は、二人の香りに溢れていて、横になっているだけでも安心する。もふっと枕に顔を埋めると、一緒に居るという感覚がより鮮明になるようで好きだ。
掛布団をあまり動かさない様に手を出して、ヒヨの顔に近づけ頬に触れる直前で止める。ああ、今はこんなにあどけないのに目を覚ますと憎らしい人。ふっと笑いながら輪郭に沿うように手を動かして、少しだけ頬に触れてから引っ込めた。
「……ン、」
触れると同時、眉を少し潜めてヒヨが唸る。起こしてしまったのだろうかとひやひやしながら暫く様子を伺うと、再び寝息を立て始めた。ほっとしつつ、もう少しだけこの寝顔を見てから寝ようと視線をヒヨに向ける。
長めの睫、短い前髪、少し見えるふわっとした後ろ髪。それなりに整った顔は鑑賞にはよく向いていた。いつもこんな風だったらいいのに。喋ると、いや、起きていると残念だ。
――まぁ、だからこそ好きなんだろう。
鬱陶しくないヒヨなんてヒヨじゃない。そんな失礼なことを考えつつ、宮は口の端を小さく上げて笑った。
「―-おやすみ。」
私は眠いんだろう、きっと。こんな変な時間に起きてしまったから。眠るヒヨに口づけをしながらそう考えて、再び布団の中に潜って眠りについた。
おやすみ、宮ちゃん。と動く口元を彼女は知らない。



2人が将来大人になった時のお話。

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