text | ナノ


シリウスの瞳がすきだ。
リリーの宝石みたいなグリーンの瞳も、ジェームズのキャラメルを溶かし込んだみたいな優しいハシバミ色もとっても綺麗でため息が出るようだけどシリウスの瞳の色はどこかミステリアスで、切れ長の瞳は色っぽいのにいつも少年のような輝きを含んでるから、見ているだけで胸がいっぱいで幸せになれるのだ。

「………なぁ、」
「んーーーー?」
「さっきからすげー視線を感じるんだけど」
「だって見つめてるんだもん」

気にしないでいいよって言うと不満気な視線をこっちに寄越しながら少し唸って、また本に視線を戻した。わたしは木陰で本を読んでいるシリウスの膝に頭を乗せて彼のことを見つめているので、集中できないのかちらちらとこっちを窺ってくるのが可愛くてふふーと笑うと整った唇が不機嫌そうに歪んだ。
下から見上げてみてもやっぱりシリウスの顔は恐ろしく整っている。風でそよいでる葉っぱの隙間からこぼれる木漏れ日は眩しいけどそのせいで伏せられた睫毛が頬に影を落として、なんだかこの間の休みにお母さんと見に行ったマグルの美術館に展示されてる絵画みたいだと思った。
どうしてそんなに肌が白いのとか、睫毛は何を食べてたらそんなに美しく長くなりますかとか、そのサラサラの髪はどこのシャンプー使ってるのとかいっぱいいっぱい聞きたいことは頭の中にぽんぽん出てきたけど、聞いたらきっとシリウスは困ったように少し笑って、そして「馬鹿。」って言うんだろうな。この前どうしたら彼女にしてくれる?ってちょっぴり冗談ぽく聞いたときの事を思い出した。

「おい、足痺れてきたからちょっと頭下ろせ」
「えーー」

シリウスが脚をもぞもぞ動かすから膝が当たって痛いので大人しく頭を下ろして隣に寝転がった。ここだと木漏れ日が眩しすぎるしシリウスの瞳は横顔からしか見えないし最悪だ。シリウスのローブを引っ張りながら眩しいようと言うと、さっきまでページを捲っていた大きくて真っ白い手がわたしの目の上に覆いかぶさった。

「これなら良いだろ。」
「別にわたしお昼寝しに来たんじゃないのに」
「お前がずっと見てるから集中できねぇんだよ。区切りが良いとこまでいったら起こしてやるから寝てろ」

シリウスの瞳が見えなくなってつまらないなあと思ったけど、眠くなかったのになんだかうとうとしてきてしまったので仕方ないし寝ちゃおうかなあ。目元をずっと覆われてるのはなんだかくすぐったくてシリウスの手をぎゅっと握るとまた「寝ろ。」って強い力で目元を覆いなおしてきた。そんなに鬱陶しかったのかな、少しショックだ

「ねぇシリウス、」
「………なんだよ」
「だいすき」

そう言って握っていたシリウスの手を離すと、面白いくらいシリウスの体が変に強張ったのが分かったので、わたしは小さく笑いながらおやすみって言ってから背を向けた。



Lenaeus caesius