安寧、崩落。
2013/05/28 23:33

平穏を願っていた。
安寧を願っていた。

天上の澄んだ空、軽やかな風が私が育てた花の薫りを運び、戦の只中に立つあの方を少しでも癒せるのならば、それが私の至上の幸福だった。


あの方の傍らで僅かな力になれれば。
あの方の心安らぐ場で些細な癒しになれれば。
あの方が住まい、還る、この場所が
どうか永劫に穏やかなものであれば。
そしてそこに、自分が在れればと。
そんな安寧をただ望んでいた。


(それなのに)


唐突に現れ、初めて聞いたあの女の声が、不思議とこの安寧を崩落せんとする足音に聞こえ、酷く不快だった。



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