手折られた幼子
2012/02/10 00:41

こんなつもりでは無かった。
こんな筈では無かった。

今我を振るったのは、友であり主である黒き覇者ではない。
我がまさに今、突き刺したのも戦の終わるその時まで共に在ろうと誓った主の敵でもない。

己が突き刺さるは主そのもの。

低く呻き、戸惑いと哀しみの目で我と我を振るう者を見つめている。
(こんな筈ではなかった。)
こんなつもりではなかった。


我を振るう者の手は、我を手に取ったその時から震えている。
きっと、我と同じ想いでいるに違いない。


主と二言三言の会話を交わした次の瞬間、器に衝撃が走る。

武具に痛みと云う概念が存在する訳が無い。
手折られた部分から今迄感じたことのない奇妙な冷たさが広がり、それは中心から末端へと急速に我を支配する。


淀み、沈むように薄れて行く思考の中。
輪廻の先にこそは、皆に幸福をと願った。



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