我らが主である六道骸様がソファーでそわそわと落ち着きがなく、携帯を見つめたまま数十分が経った。

何をしているんですか、なんて聞いたら何かに巻き込まれる事は今までの経験上、分かっていること。



「……(…めんどい、けど)」



それでも聞いてしまうのは結局のところ、オレは骸様が大切だからだ。












「由夜にメールを…?」

「はい、つい先程」

「…あぁ、返信が来ないんですね」

「何故、まだ何も言ってないのに分かるんですかね。」

「それは、まぁ……」

「どうせ僕のメールに返信する程、由夜は暇じゃないですよ。」

「……」

「彼女は僕より睡眠が大事なんです…!!く…っ!生物以外にも憑依が出来たらいいんですが…!!」



何をする気ですか、骸様。

いや、どうせ、骸様の事だ。

由夜が使っているベッドや布団、枕に出来るものなら憑依したいとか考えているんだろう。



「ベッドや布団、枕に憑依だなんて考えないでください…」

「それも捨てがたいですがパジャマがいいです」

「……」



あぁ、もう、本当にこの人はいつもオレの想像の遥か上を行く。
お願いだから妙な事で高みを目指さないで欲しい。

骸様はうっかり雲雀恭弥のパジャマに憑依して痛い目にあった方がいいと思う。



「はぁ…、由夜はやはり僕の事なんて…」

「………」

「思い返せば、僕はろくな事をしてませんよね」

「……何を今更」

「千種、何か言いましたか」

「……いいえ。」



由夜と一緒だと無駄にポジティブなのに、本人がいないとどうしてこうもネガティブなんだろうか。

とりあえず、落ち込まれるとめんどいから、何か言わないと…。



「……、…嫌われては、ないと思います」

「そこまで好かれてもないでしょうね」

「……本当にめんどい」

「千種」

「……、……何でしょう」



ごくり。
骸様に真剣に見つめられたら緊張で汗が出てくる。

また妙な事を命令するつもりだろうか。

どうしようと思っても、オレは静かに骸様の言葉を待ってしまう。



「千種、少々、頼みがあるのですがー…、と、おや?」

「……?」



頼みがあるという言葉にピクリと眉が反応して身構えてしまったけれど、良いタイミングで骸様の携帯にメールが届いた。



「骸様、由夜ではないですか?」

「……」



メールの受信により表情が柔らかくなった骸様は携帯を見る。

だけど、メールを見たら不機嫌そうに眉間に皺を寄せた。



「……何だったんです?」

「………犬からでした」

「犬……?何故…?」

「課題が分からないから教えてください、と無駄に絵文字を使ってメールを送ってきました」

「……」

「しかも何ですか、これは…!」



ずいっと犬からのメールをオレに見せる骸様はご立腹。

何故なら文章の最後にパイナップルの絵文字が使われていたからだ。



「クフフ…、どこにいるんでしょうねぇ?みっちり勉強を教えて差し上げましょう」

「……」



犬って本当に馬鹿。

でも、骸様の気が紛れたから、オレとしては助かったかもしれない。

犬もたまにはいい事をするな。

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