とある休日の朝。
目が覚めると、起きることはせずそのまま布団の中でぼーっとする。

朝は弱い。
眠くて眠くて頭が冴えない。

平日だったら無理してでも起きなくてはいけないけれど、今日は休み。

もう少し眠ってもいいわよね、そう思うと同時に欠伸が出た。



『……もう少し、だけ』



そう呟き温かい布団の中で寝返りをすると携帯が鳴った。

ピピピ、と鳴る携帯。
電話はヒバードが歌う並盛中校歌だから、この音はメール。



『……』



メール、誰だろうと思うと同時にあいつの顔が思い浮かんだ。

思い浮かんだら、それ以上を考えるのが億劫になり抗うことなく夢の世界に飛び込んだ。












ピピピ、ピピピ、と何通もメールを受信してしまう私の携帯。
いい加減、イライラして目が覚めてしまい携帯を手に取った。

画面を見ると三件のメール。

送り主はすべて骸。
一通ならまだしも何度も送られるメールには思わず顔がぴくりと引き攣った。



『何なのよ…』



というか今更すぎるけど、私は骸にメールアドレスも番号も教えてないのに何で知っているんだろうか。

変態に加えてストーカーだなんて冗談でも笑えない。

どうしたものかと寝起きの頭で考えても、普段同様、咬み殺したいとしか思いつかない。

とりあえず、ここにいない骸を咬み殺すのは無理だから、まずは冷静になって一通目のメールを開いてみた。



"由夜、おはようございます、朝ですよ"



『……だから、何。』



消去のボタンを迷わず押した。
何であんたに起こされないといけないの。

下らないことでメールを寄越さないでよ。
この分だと二通目は何となく想像がついてしまう。

それでも、つい見てしまうなんてどうかしてる。



"おやおや、まだ起きてないのでしょうか。
クフフ、さては夜更かししていましたね?

早く起きないと君の可愛い寝顔を妄想しますよ、いいんですか?"



『どんな脅しなの』



これも消去。

三通目はどうせ腹立たしい妄想を送りつけて来たんじゃ…?

見たくないけれど、見ないまま消去をするのは骸の妄想し放題を野放しすることになる。



『……これで最後だし、ね』



仕方ない。
ここ最近ですっかり諦めがよくなった私はピッとボタンを押して最後のメールを見た。



『………!』



"黒曜センターに来ませんか?"



最後のメールはその一言だけ。
けれど、犬、千種君、クローム、そして骸が写った画像が添付されていた。

メールの返事を寄越せって口を尖らせているような犬の横には呆れた千種君。
クロームはそんな二人をきょとんとして見ていて、骸は困ったように笑っている。



『………はぁ』



これじゃ、消去なんて出来ないじゃない。



『……誘うつもりなら最初から言えばいいのにね。』



"行く"

気まぐれなんかじゃない返事を送信して私はベッドから下りた。

どうせ骸のこと。
素直に答えた私を問うはず。

聞かれたら、どう答えよう。

行かないと煩そうだから。
あんたが妄想するとか言ってたから咬み殺しに来た。



『……(…それとも)』



来たいから来た、と言ってみようか。

群れるのは好きじゃないけど、骸達は嫌じゃない。
骸には呆れたりイラついたり咬み殺したくなる時は多々あるけどね。

こんな日常が、私は好きになんだと思う。



『ん……?』



身支度を整えていたらまたもやメールを受信した。
しかも再び三通。

タイミング的に骸からの返信だろうけれど、何で三通?



『あ……』



"来るならさっさと返信しろびょん、バーカ!!"

"うれしい。待ってる。"

"トンファー、忘れずにね"



『……』



彼らからのメールを見たら、柄にもなく自然と自分の口元が上がる。

ぱたんと携帯を閉じて私は出かける準備をして玄関に向かった。



「随分と機嫌が良さそうだね、由夜」

『……ッ!!』

「どうしたんだい?」

『な、何でも、ない!恭兄、私、少し出かけてくるから』

「珍しいね、いつもならまだベッドの中なのに。どこに行くんだい?」

『……適当に買い物?』

「何で疑問系…」

『何でも、ない。とにかく、出かけるから』

「…そんなに慌ててどうしたのさ」

『…何でもないってば。…ー…じゃあね。』

「あぁ、いってらっしゃい」

『…ー…ッ』

「………反抗期?」



end



2012/03/04

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