今日は並盛神社で夏祭り!
夕方に待ち合わせして山本、獄寺君、京子ちゃん、ハル、そして、幼なじみの名前と行く予定!

……なんだけど、一つ問題が発生してしまった。



「ツナ、サボってんじゃねぇ。早く宿題を終わらせろ。ノルマ達成しねぇと祭りに行かせねぇぞ。」

「なっ!?終わる訳ないだろ!?今日くらい見逃しー…」

「死にてぇのか?」

「ひぃーっ!!」



レオンの姿は一瞬で銃に変化しオレに向けられた。

リボーンの奴、目がマジだ!!
宿題を終わらせないとオレを祭りに行かせない気だ…!!



「んじゃ、オレは先に行ってるぞ」

「なっ!?一人で先に行くなよ!」



リボーンがごそごそと浴衣に着替え始めると銃だったレオンはお面になる。
出かける仕度が整うとオレを机に向かわせリボーンは先に神社へと行ってしまった。

そんな様子を一部始終、見ていたのはオレの幼なじみの名前。
待ち合わせまで一緒に行こうって誘ってくれていたのにオレの宿題が終わらないばかりに待たせてしまっていた。



『ねぇ、ツナ、終わりそう…?』

「が、頑張るよ…、というか、ごめん、待たせちゃって」

『大丈夫だけどさ、早くお祭り行きたいよー』



文句いいつつ一番、扇風機の風があたるベッドで漫画を読んでいる名前。
暇なのか足をばたばたさせて寝転んだ。

寝転んで浴衣が乱れても知らないからな、まったく!

大体、幼なじみとは言えオレだって男なのに恥ずかしいとか思わないものかな。
名前は気にしてないようだけどオレは目のやり場に困って宿題に目を向けながら話した。



「せ、せっかくの浴衣なんだから大人しくしてろよな!」

『喋ってる暇があるなら早く終わらせてよね!』

「う……、わ、分かってるよ!」

『……あ、そうだ!ねぇ、ツナ!』

「なんだよ、名前。ったく、人にさっさと終わらせろって言ってんのに喋るか普通!」

『ははっ、ごめん、ごめん!』

「……で、何?」

『獄寺君を呼んで教えてもらった方がいいんじゃない?』

「は?なんで!?」

『あぁ見えて実は頭がいいから。この間のテスト、全部、百点とかありえなくない!?』

「……」



あぁ見えてって言うのは失礼だよ、名前…!!
そりゃオレも最初は獄寺君って勉強、出来なさそうって思ったけど!

早く夏祭りに行きたくて仕方ないのか携帯片手に名前はうずうずしていた。
まさか本当に獄寺君を呼ぶ気…!?



『ツナ、来てもらった方が早く終わるよ?』

「そりゃ、そうだけどさ…」

『どうしたの?』

「何か悪いじゃん、いきなり呼び出すなんて、さ」

『えっ?』



いきなり呼び出すなんて悪いから、っていうのは嘘。
本当は名前と二人きりでいたいから呼びたくない。

この気持ちを気付かれないように必死に宿題に集中するふりをした。
そんなオレの隣に名前がちょこんと座る。



『大丈夫だよ!"十代目!このオレが来たからにはもう安心です!任せてください!"って言うに決まってんじゃん!』

「なっ!?それって獄寺君の物真似!?」

『うん!似てるでしょ!』

「……」

『あれ、似てなかった?』



そう言って名前は無邪気に笑った。

何だか傍にいるオレと話しているよりも、獄寺君の事を話してる方が楽しそうに見えて無性に苛々した。
もしかして名前は獄寺君の事が好きだったりするのかな。

かっこいいもんな、獄寺君。



「………」

『こら!ツナ!ぼーっとしてないで早く宿題やらないと!』

「……、…先、行ってもいいよ」

『は…!?なんで…っ!?』

「山本も、獄寺君だって、もう着く頃だと思うし…」

『………』

「……」



馬鹿だ、オレ。
何を言っちゃってるんだろう。
でも、名前が他の誰かの事を楽しそうに話していると、もやもやというか、苛々する。

そんな事を考えていると、シャーペンを持つ手が自然に止まってしまった。
元から進まないのに、これじゃ全然、進まない。



「……」



汗をかいたジュースの氷がカランと鳴り静けさを際立たせた。

それを破ったのは名前。
小さく握った拳でオレの頭を軽く小突いた。



「いてっ、な、何すんだよ!?」

『馬鹿な事を言ってないで、さっさと手を動かしなさい!』

「だ、だって…っ」

『私はツナがいないと楽しくないの!それとも何?ツナは私と一緒なのが嫌なの!?』

「ち、違うよ!そうじゃなくて…っ」

『あっ!?』

「な、なに!?どうしたんだよ」

『ツナ!!外見て、外!』

「はぁ!?」

『ほら!早く!』



さっきまでの怒りはどこへやら。
言われるまま窓を見るとドォンと花火が打ち上がった。
それを見て、はしゃぐ名前はいつもよりも輝いて見えた。

はしゃぐ名前を見ていると胸の奥のもやもやしたものが消えていく。
代わりに嬉しいような、くすぐったいような、なんとも言えない気持ちで胸が一杯になる。



『花火、綺麗だね…』

「……うん」



この気持ちは、何なんだろう。

そう考える間もなく、しっくりと来る答えが浮かんだ。
さっきから悩んでいる宿題よりも、ずっと簡単なこと。

オレは名前の事が、好きなんだ。

きっと友達、幼なじみとしてじゃなくて、一人の女の子として。



「ねぇ、名前」

『んー?』

「行っちゃおうか?お祭り。」

『え…!?リボーン君、大丈夫なの?』

「大丈夫だよ。後でねっちょり勉強、頑張るからさ」

『で、でも……』

「いいから」

『……』



ちょっとした悪いことをしてるオレ達はくすくす笑って一緒に家を出る。
どちらともなく自然に繋いだ手は、少し恥ずかしいけれど離したくなくてぎゅっと握った。

ふと、空を見上げると、また花火が打ち上がっていた。



『わぁ…!!今の花火、すっごく綺麗だったね!』

「やっぱ夏と言えば花火だよな」

『うん!それにー…』

「たこ焼き、チョコバナナ、綿菓子…」

『カキ氷、林檎飴、射的に金魚すくい!』

「……だね、ははっ」

『うん…!』



思ってることが一緒だったオレ達。
些細なことに小さく笑いながら神社へと向かうオレ達を花火が七色に染める。



「……」



一瞬で消える花火。
その花火で気付いた君への気持ち。

君が好きだよ、って気持ちは一瞬なんかじゃない。



きっと伝えるから待っていて。



end



加筆修正
2009/07/15

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