夜空を見上げると満月が笑っているように見える。
その月を隠す雲は、まるで意思を持って意地悪しているよう。

こんな夜は何か特別な事が起こりそう。
普段と変わらない風景なのに、そう思わせる不思議なハロウィーンの夜。



『……』



今日はハロウィンをやりたいと言うランボ君達に付き合うために魔女の仮装をした。
仮装してツナの家でちょっとしたパーティーをする予定。

そして、その予定通りにツナの家に来た訳だけど今日はハロウィン。普通に訪問するなんてつまらない!

玄関に出てきたツナ達を驚かせちゃおう!という悪戯を思いついた。

さてさて、そうと決まれば、どうやって驚かそうかな?



「あら、名前?」

『わ…っ』

「私よ、ビアンキ。時間より随分と早く来てくれたのね」



後ろを見たらビアンキさんが立っていた。
どうやらリボーン君のためにお菓子を買って来たらしい。



「さぁ、入りましょう。隼人や山本武も、もう来ているのよ」

『あ、あの…』

「どうしたのかしら?」



驚かせたいという事をビアンキさんに伝えると意味深に微笑した。
どうやら協力してくれるみたいで私は小さくガッツポーズで答える。

ビアンキさんは、さっそく自分の衣装と道具を家からこっそり持ち出して二人で玄関の前で身を潜め作戦会議。



「魔女だけではインパクトに欠けるわね…、名前、ちょっといいかしら?」

『はい?』

「これを片目につけるわね、それとこれを持って」

『え……?』



確認する間もなく、ビアンキさんは私の顔に何かを装着し毒々しい紫色のケーキを持たせた。
片手には予め箒を持っていたから魔女の怪しい雰囲気が増す。



『あの、ビアンキさん…』

「何かしら?」

『私の顔に何を付けたんですか?』

「特殊マスクよ」

『特殊マスク…?』

「えぇ、目玉が飛び出てるグロテスクでリアルなものよ」

『これじゃ、もう魔女じゃない気が…』

「シッ、来るみたいよ」

『え…?』



話すのを中断して聞き耳を立てると玄関からツナ達の声が聞こえた。
私の後ろにいるビアンキさんはごそごそと何かしている。



『ビアンキさん?』

「すぐ着替えるから問題ないわ、ツナ達の様子を見ていて」

『あ、はい!』



私の仮装をパワーアップしてくれてたから着替えるのが遅くなっちゃって悪い事しちゃったかも…!!
急いで着替えてくれてるビアンキさんに謝って私はツナ達の様子を窺う。



「名前ちゃん、遅いね、どうしたんだろ?」

「道草くってんじゃねぇよ、たくっ」

「まーまー、でも心配だよな、外で待ってようぜ」

『……(来た!)』

「今よ、名前!」



玄関の扉が開く瞬間、ビアンキさんが懐中電灯で照らしながら前に出た。



『トリック・オア・トリート!』

「大人しく出すもの出しなさい」



ビアンキさん、その台詞じゃ恐喝です…。

私はビアンキさんの台詞に多少、気が抜けてしまった。
だけどツナ達は恐怖で上手く届かなかったらしく悲鳴が響いた。



「ぎゃぁぁぁ!!」

「ひぃぃぃーっ!」

「な……っ!」

『やった!成功!』



ツナはあまりの恐怖に腰を抜かしたらしく床に座り込む。
そして意外な事に獄寺が倒れてしまった。



『……って!ツナは予想通りだけど何で獄寺、倒れちゃったの!?』

「う……ッ」



普段、あんなに怖いもの知らずな雰囲気なのに、獄寺って実は怖がりだったの!?

倒れた獄寺に急いで駆け寄る。
しゃがんで頬を軽く叩いて声をかけても反応がない。
どうやら完璧に気を失っているらしい。

これは単なる怖がりのレベルじゃない…!!
一体、何で!?



「名前ちゃん…?それにビアンキ、か……、びっくりした…っ!!」

「ははっ、おもしれー、リアルなのなー」

『……』

「びっくりしたぜ!すげぇな!」



リアルな仮装で笑い飛ばせるのは世界中を探しても山本くらいだろう。
むしろ、そんなに笑える要素があるのかってくらいに大爆笑する山本が怖いよ…!!



『というか、笑ってないで!ねぇ、山本!獄寺、泡を吹いて気を失ってるんだけど!何で!?』

「ん?あ、本当だ、おーい、獄寺、大丈夫か?」

「あぁ、それは多分、名前ちゃんの持ってるケーキと後ろのせい……」

『ケーキと………後ろ?』



ツナ、何を言ってるの?
後ろにはビアンキさんしかいないのに。

不思議に思って振り向くと私がしゃがんで獄寺の様子を見ていたからビアンキさんの足元が見えた。

ほら、やっぱりビアンキさんしかいないじゃない。
ゆっくりと上に視線を移すと、ビアンキさんの顔が懐中電灯で明るく照らされていた。

その顔を見たら息が止まった。



『……ッ!!』

「………」



さっきは暗くて、よく見えなかったけど髪の毛が無数の蛇になっている。
まるで獲物を狙うかのように光る瞳が私を捕らえ、艶やかな真っ赤な唇はグロスによって妖しく光り孤を描いた。



『きゃぁぁぁーッ!!』



改めて言うまでもなく本日一番の悲鳴は私でした。



「メデューサとは中々だな、ビアンキ。」

「ふふ、リボーン、褒めてくれて嬉しいわ」

「ビアンキ怖ぇーっ!!っていうか、名前ちゃんまで気を失っちゃったーっ!!」

「ははっ、ハロウィンって面白いのなー」












あまりの迫力に私も獄寺も石化して気絶!



end



2010/10/31
お題配布元:TOY

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