十二月、町はどこもかしこもクリスマス一色。

もうサンタクロースを信じる子どもじゃないけど、クリスマスって、誰でもそわそわしてうきうきするものだよね?



「しないよ、馬鹿じゃないの」

『う……(予想通りの反応!!)』



あぁ、聞く相手を間違えた。

目の前で口をへの字にして机に頬杖している彼は並盛風紀委員長の雲雀恭弥。
そんな彼の頭に乗り、うとうとしているのは鳥のヒバード。

私の彼氏様は三百六十五日一年中、世のイベントに興味が沸かないらしい。
イベントに興味あると言えば学校関係くらいだ。

クリスマスも例外ではないって分かりきっていたはずなのに、ちょっとくらい一緒に楽しんでくれないかなと思っていた私が馬鹿でした。

まさかクリスマスもイヴも応接室で風紀委員のお仕事なんて、そんなの誰が想像しただろう。

恋人と一緒なのにこんなのってないよ!



『少しくらい、いいじゃない!終わったらちゃんと仕事するもん!』

「別にいいけどね、そんな事して楽しいのかい」

『楽しいよ、恭弥も一緒にー…』

「しない」

『ですよねー…』



……ふぅ。
恭弥を横目にため息。
わざとらしくため息を零しても恭弥は"これ"をただ見つめるだけ。

"これ"というのは少しでもクリスマス気分を味わいたくて応接室に持ち込んだツリー。
せめて一緒に飾りつけくらいしてくれればいいのに。

そう思いながら私は一人黙々と飾り付けをしていた。



『あれ?』

「どうしたんだい」

『……星がない』

「星?」

『うん…、ツリーの一番上に飾る星』

「家に置いて来たんじゃないの」

『そうなのかなぁ、これで全部だと思ってたのに…』

「別に星があってもなくても変わらないでしょ」

『えー!変わるよ!星がないってだけでなんか寂しい!』

「そういうものなのかい」

『そういうものなの!』



口を尖らせ言うと恭弥は立ち上がり私の傍へと歩み寄りツリーをまじまじと見た。
そしてヒバードを呼ぶと指先に移動させてツリーの一番上に誘導させる。

ツリーのてっぺん、本来、星があるべき場所にヒバードがちょこんと止まる。



『…何してるの』

「丁度いい止まり木になると思ってね」

『と、止まり木って…』

「これで我慢しなよ」

『………でも丸い』

「同じ色でしょ」

『……』



ヒバードは飾りじゃないからね!?
でも、ちゃんと星の位置に座ってくれているヒバードが可愛くて、これでもいいかなと思ってしまう。



『ヒバード、そこにいていいの?』

「いるって事は別にいいんじゃないの」

『そうかも知れないけどさ…』

「さ、ツリーはこれくらいにしてそろそろ行くよ」

『どこに?』

「見回り。クリスマスだからって浮かれて群れてる奴等を狩ろうと思ってね」

『えー、見回りー!?』

「……」

『う……』



じっと睨まれると私には黙る以外の選択肢はない。

寒い中、恭弥と街中を特に何もすることなく見回りをしているとあっという間に日が暮れる。

並盛中へ向かっている途中、ふと見えげた空には点々と散らばる星、白い息を吐けばきらりと流れた。



『あっ、流れ星!』

「へぇ、珍しい」

『うん!寒い中、外に出てラッキーかも!』



何かいい事あるといいなぁ、と何気なく話しながら繋いだ手にぎゅっと力を入れると恭弥も握り返してくれた。
それが嬉しくて腕に抱きついて二人で歩いて行く。

寒いけれど恭弥が傍にいるから温かい。
クリスマスらしくはないけれど、これで十分なのかもしれない。

そう思っていたのに応接室へと戻ってびっくり。



『な、何これ…!?』

「……」



私と恭弥が見回りに行っている間に何が起きたのか。
応接室に戻ると部屋が飾りつけされていてテーブルにはたくさんの料理、そして可愛いケーキが並べられていた。



「名前がクリスマスクリスマスって煩かったからね」

『恭弥、もしかして草壁さんに頼んでくれたの?』

「君は気にすることないよ。ねぇ、お腹すいた。食べよう。」

『……うん!ありがとう!メリークリスマス!』



クリスマスツリーのライトをつけて恭弥と乾杯。
ツリーの上のヒバードは鳥とは思えない良い発音でクリスマスソングを歌ってくれた。

並盛校歌と同じように恭弥が教えたのかな、と思ったら笑いがこみ上げてきて恭弥に不思議な顔で見られてしまったクリスマスイヴだった。


***


昨日の楽しい余韻に浸りながら私は翌日も仕事のため応接室へと向かう。
応接室に着いて、ぱっと目に入ったツリーを見てびっくり。

ツリーのてっぺんには金色の星が、そしてツリーの下にはプレゼントが置かれていた。



『……ありがとう、恭弥!』

「…何がだい」

『プレゼントとツリーの星!』

「……、…知らない」

『恭弥しかいないでしょ、もう!』

「……昨日の流れ星とサンタクロースの仕業じゃないの」

『な、流れ星…!?それにサンタって…』

「…不法侵入とはいい度胸だ。咬み殺さなきゃね」



似合わないことを言ったからか恭弥は照れてそっぽを向いてしまった。
そんな彼に抱きついて、私も用意していたプレゼントを渡した。












大好きだよって伝えたら、君は微笑んだ



end



2010/12/25

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