彼と一緒に過ごした日。
別れ際では必ず"ばいばい、またね"って言っていたけど、それはもう終わり。

帰る場所が一緒になって"ただいま"と"おかえり"が日常になった。

彼のぬくもりを感じて眠り、朝一番におはようって言える事が嬉しくてたまらない。

学生時代から付き合っていた彼と結婚して約一ヶ月。

"雲雀名前"という響きがまだ少し慣れなくてくすぐったくて、これは本当に現実?と今でも思ってしまう。

だけどお互いの薬指に光る指輪を見つめて結婚した事に実感する。
何度、見たって未だに顔がにやにやしちゃう。

そんな私に気付き、隣に座り寛いでる恭弥はバカにしたようにふっと笑っていた。



「またにやにやしてどうしたのさ、名前」

『バカにするから言わない』

「バカにされるような事を考えてたんだ」

『う……』

「図星だね」



今日は何にも予定がない休日、二人でまったり過ごしていた。
ここの所、慌しかったから、こんなにゆっくり過ごすのは久しぶり。

のんびりとテレビや雑誌を見たりヒバードを構ったりしているとあっという間に時間が過ぎていった。



『もうこんな時間!夕飯、何が食べたい?』

「まだ、ゆっくりしてればいいじゃない」

『え……、わ…っ』



私がソファーを立とうとすると恭弥は肩に寄り添って阻止をする。
肩に恭弥の髪が掛かりくすぐったいけれど甘えるような仕草が可愛くて頭を撫でた。

それが気持ちいいのか珍しく大人しくしている。



『恭弥…』

「ん………」

『ご飯、作ってくるから待っててね』

「やだ」

『やだって言われても…、ほら、ヒバードと遊んでて?』

「…ちょっと。子供扱いしてないかい。」

『ふふっ、してないよ』

「………」



してないよとは言いつつも頭を撫でてると、彼が妙に幼く感じてしまう。
クスクスと笑っていると恭弥はムッとした表情で私の膝に頭を置いた。



『ちょ…っ』

「……」



今の状態はいわゆる膝枕。
こうされては動く事が出来ない。
気を良くした恭弥は手を伸ばして私の髪を撫でた。

いつもは迫力満点の鋭い瞳。
だけど今の瞳はまるで構って欲しそうな猫ちゃんみたい。

私は困ったように話すけれど、本音を言えば全然、困っていない。
むしろ、こうして甘えてくれる恭弥が嬉しい。



『……もう!これじゃ夕飯、作れないよ?』

「まだいいって言ってるだろ」

『今日はハンバーグ、作ってあげようと思ってたんだけど』

「………」

『今、ちょっと退こうかなって思ったでしょ』

「……思ってないよ」

『嘘だー』

「嘘じゃないってば」



ハンバーグが好きだなんて恭弥って子どもみたい。
実は私も好きだから人のことを言えないけどね。

何だか、おかしくなっちゃってくすくす笑っていると恭弥は口をへの字にして目を瞑ってしまった。



「寝る。」

『だーめ。寝るなら膝枕は終わりだよ?』

「……」



私の言葉を聞いて恭弥はぱちっと目を開ける。
もう少しだけいいでしょ、なんて無言の訴え。

今日は本当に甘えたがりなんだから!
嬉しいけれど困っちゃう。



『そんな顔で見つめても、だーめ!』

「……じゃあ、起きてるからもう少しだけ」

『え…?』

「いいだろ、名前」

『……』

「傍にいてよ」



もう私に拒否権ないじゃない。

というか、そんな事を言われたら離れるなんて出来ない。
恭弥は分かってやってるのかな。



『少しだけ、ね?』

「…僕が眠らなかったらね」

『起きてるからもう少しだけって言ったくせに眠る気満々?』

「……だって、眠い。」



ふぁ、とあくびをして恭弥は目を閉じた。
まだ起きてるだろうから「今日は随分、甘えん坊だね」って言うのは心の中で、こっそりと呟く。

さらさらとした髪を撫でていると恭弥の口元がほんの少し上がった気がした。
私は小さく笑い無防備に瞳を閉じている恭弥を見つめていた。



『……』

「………」



大好き、幸せ、愛しい。

二人でいると、そんな言葉しか思いつかない。












これからもずっと傍で感じていたい。



end



2010/08/18
2900000hitキリリク、えり様へ!
リクエストありがとうございました!

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