付き合い始めて三ヶ月になる彼女、名前。 恋人関係になったのは、たったの三ヶ月だけれど幼い頃から一緒。 彼女は僕が唯一、傍にいても煩わしいと思わない人間だ。 一人を好む僕が特別に思うのは君だけ。 昔から傍にいるのに分からないものなのかな。 「まぁ、分かってないから、そんな事を言い出すんだろうね」 『え……?』 付き合ってても恋人らしくない。 恭弥は私のこと本当に好きなの?ってね。 「……」 書類から視線を外して名前を見ると頬を膨らませて拗ねているようだった。 喜怒哀楽が顔に出やすい彼女の考えは、すぐに分かってしまう。 そろそろ大声で怒り出すんだろうなと思っていると案の定、声をあげた。 あまりに予想通りで微笑すると、それがまた名前は気に入らなかったようでキッと睨む。 『何がおかしいの!』 「別に何でもないよ、で、名前。」 『何…?』 「何がそんなに気に入らないんだい」 『き、気に入らないっていうか…っ!!だから、付き合う前と全然、変わらないなって!』 「ふぅん……」 『ふぅんって…、恭弥、私の言ってること分かってる?』 「分かってるよ、つまり名前は恋人らしいことをしたいって事だろ」 『へ……?』 「随分と積極的だね」 『え…?』 僕は立ち上がると名前の隣に座り頬に触れる。 名前は「何をするのか」想像したらしく顔が一気に赤くなった。 『な…っ、え…っきょ、恭弥…っ?』 「……」 赤い顔に潤んだ瞳。 彼女の頬の熱がひんやりとした僕の指先に移っていく。 僕は名前の柔らかい髪を撫でて耳元に唇を寄せて囁いた。 「耳まで赤いね、一体、何を想像したんだい?」 『……っ』 「名前…」 『い、意地悪!そんな事、言える訳ないでしょ…っ』 「そんな事?」 『…ー…っ』 僕の一言一言に反応する名前が可愛くて仕方がない。 もう少しだけ意地悪をしたくなって口角をあげて距離を縮めた。 「してみようか」 『え……?』 「恋人らしいこと」 『こ、恋人らしい、こと?』 「そう。」 『………!?』 いきなりの展開に名前は頭が上手く回らないのか驚いた瞳で僕をじっと見ている。 「目、閉じなよ」 『…ー…っ』 僕がそう言うと名前はキツいくらい瞳を閉じた。 そんな名前の髪をさらりと撫で顔を近付けていくと、心なしか身体を震わせている。 「……」 『………っ』 「………なんてね、しないよ」 『……へ?』 「間抜けな声に顔。そんなにしたかったんだ?」 『……っ!恭弥の馬鹿!』 「馬鹿でも何でもいいよ。そんなガチガチに緊張してる名前にキスなんて出来る訳ない」 『あ……』 「……また今度ね」 仕事の続きするよ。 そう言って立ち上がり名前を見ると、ほっとしたような、どこか残念そうな表情をしていた。 「名前」 『ん……、何…?』 「……」 『恭弥……?』 いつもの声、いつもの表情。 僕はすっかり緊張が解け安心しきっている名前に不意打ちに額に口付けた。 『……!!』 「……」 『な…っ、今、のって……!?』 「…嫌だったかい。」 『い、嫌じゃない、けど…』 「なら問題ないね。……あぁ、そうだ」 『な、何…!?』 「付き合う前と変わらないって言ってたよね」 『う、うん…、言ったけど…』 「変わらなくて当たり前だよ」 『え……?』 「………」 昔から君は僕の特別だから 君がいないと僕は僕でいられない。 end 2010/06/29 閏様へ 三周年フリリク企画 リクエストありがとうございました! お題配分元:Aコース |