曖昧なことが大嫌いだ。 yesかnoか、白か黒かはっきりして欲しいし、納得が出来ないものにはどうしても納得、出来ない。 そんな性格だからか、あいつと一年の頃から対立してた。 あいつは一年で既に風紀委員長、私は生徒会のメンバー。 やり方はたくさんあるのに、何故「暴力」で人を支配するんだろう。 あいつなりに「いい学校」にしたいと思っているのは分かる。 意思が強く自分を貫き通しているところも認める。 だけど、どうしてもあいつのやり方が気に食わない。 『雲雀恭弥』 「……また君か、苗字名前」 『それはこっちのセリフだ』 「……」 『緑化委員からクレームが来ているんだ』 「それをどうにかするのが君の仕事じゃないの」 『だから来たんだ。そもそもの原因は雲雀恭弥、君だからね』 「………」 風紀委員長の雲雀恭弥は気に入らない奴は力で潰す。 それは一年の頃からずっと変わらないスタイル。 私は、そんな雲雀恭弥が気に入らなくて生徒会長になった。 生徒会長になり風紀委員、そして学校を変えたかった。 だけど、生徒会長として雲雀恭弥に意見しても考えを変えるつもりはなく衝突ばかりの日々が続いていた。 「その話なら前にしたはずだけど」 『………』 「本当、君は群れを作って一年の時から煩いね」 『君も何気に群れてるだろ』 「……喧嘩を売ってるの」 『そっちこそ』 「………」 キッと睨まれると怖い所かムカついてしまい私も負けじと睨み返す。 いつものパターンになり私達は同じタイミングでため息を吐いてしまった。 『………』 「……」 『真似するな』 「君こそ」 『………』 いつまで経っても変わらない状況。 私はまた深く息を吐いて雲雀恭弥を見つめた。 雲雀恭弥は今更、何を言っても変わらないだろう。 だからと言って大目に見てやるのも生徒会長として如何なものか。 まともに風紀委員の仕事をしているのであれば、こちらも折れることが出来るのに困ったものだ。 「苗字名前、君、もう少し大人しくしてたらどうだい。そうしたら少しは可愛くなるのにね」 『無理だ。』 「でないと今度は君を潰すって言ったら?」 『雲雀恭弥の事だから潰す気でいるなら、とっくに潰しにかかってるだろ』 「……」 『図星だったか?』 「……君は本当に僕をイラつかせる天才だね」 『それは、どうも。』 「……」 『雲雀恭弥』 「なんだい」 『君こそ、もう少し大人しくしてくれないか?』 「……例えば、どういう風に?」 『例えば、そうだな…。ちゃんと指定の制服を着て教室で授業を受けてトンファー封印。あとはー…』 「やだ。」 『……』 「……でも、僕の条件をのむなら少しくらいは妥協してあげる」 『ちゃんとしてくれるのか?』 「咬み殺す奴を少しだけ減らすよ」 『まさか、それだけか…?』 「文句ある?」 『………』 暴力が減ってくれるならまだマシか。 条件は具体的にどういう事かを聞くと雲雀恭弥は私をじっと見て考え始めた。 その表情からは何を企んでいるのか分からない。 「……」 『人をジロジロ見て何なんだ、まったく』 「………」 『……私に言いたい事があるならさっさと言ってくれ』 「……君、恋人いる?」 『………はぁ?』 「だから、恋人いるのかって聞いているんだけど。」 『いない。今まで生徒会の事しか考えてなかったからな。』 「……好きな奴は?」 『いる訳ないだろう』 「……」 『それがどうしたんだ?』 「………気になってる奴もいないのかい」 『いない。』 「………」 『さっきから、おかしな質問ばかりだ。どうかしたのか?』 「…いや、何でも。」 『何でもない訳ないだろ』 「……はぁ」 何でそんなに深いため息を吐かれないといけないのか。 早くしろと言わんばかりに睨むと観念したように重い口を開いた。 「条件…」 『あぁ、さっさと言ってくれ』 「僕の恋人になること」 『恋人?』 「……言っておくけど、恋人のふりだよ」 『理由は?』 「女子が煩くてね、恋人がいると知れば近づいて来ないだろ」 『恋人がいるいない関係なしに雲雀恭弥に近づく女子を見たことない気がするんだが』 「………」 『まぁ、恋人のふりってだけなら別に構わない。私で事足りるならば。』 「……そう」 雲雀恭弥は立ち上がると手を差し出す。 契約成立の握手か? そう思い私は雲雀恭弥の手を取った。 「……握手じゃないよ」 『違うのか?』 「違う。…こういう意味。」 『……?』 「……」 クスッと綺麗な笑みを浮かべて雲雀恭弥は私の手を握って歩き出す。 手を離そうと思ってもしっかりと握られているから叶わず、背中を見ながら話しかけた。 『雲雀恭弥、どこへ行くつもりなんだ?』 「恭弥。」 『……?』 「恋人をフルネーム呼びする気かい、名前」 『…あぁ、そっか。それじゃ、今度から恭弥って呼ぶ。…で、どこに行くんだ?』 「……帰る」 『…帰る?』 「そう」 『一緒に帰るって事か?』 「当たり前でしょ」 『学校以外で恋人のふりをする必要があるのか?』 「……君って本当、少しも僕の事を意識してないんだね。ムカつくな。」 『何か言ったか?』 「…別に。これから覚悟してよ」 『恭弥もな。条件のむんだから少しは静かにしてくれ』 「…ー…っ!?」 ぎゅっと手を握り返すと驚かせてしまったようで恭弥はビクッと震えた。 その反応が面白くてニッと笑う。 夕焼けのせいで顔を赤くさせている恭弥はどこか、いつもよりも表情が読みやすい。 「……っ」 『……』 改めて繋いでいる手を見ると、男と手を繋ぐことも隣を歩く事も、名前を呼ぶことも初めてだと気付いた。 気付いたと同時に少しだけ早くなる鼓動。 私の頬が熱くなっているように感じる。 恐らく赤く染まっているだろう。 だけど、きっとこれは夕焼けのせいだ。 多分、恋じゃないけど 『恭弥と一緒に帰るのも悪くないな。』 「…どういう意味?」 『好きだって事だ。』 「……っ君、よく天然って言われるんじゃない?」 『何故?』 「特に意味もなく気軽に好きだなんて言うものじゃないってこと」 『意味もなく、ましてや気軽に言う訳ないだろう。私は好きなものは好き、嫌いなら嫌いだ。』 「……ワォ、本当に性質が悪いね」 『恭弥に言われたくないな』 「意味が違うよ」 『……?』 「……」 end 2009/05/12 二周年フリリク企画 冬月紫苑様へ! リクエストありがとうございました! あまり男勝りなヒロインになっていなくてすみません(>_<) |