放課後の応接室はゆったりとした時間が流れる。 私はいつものようにふかふかのソファーに寝転がった。 目の前の人物を見ると机に向かい書類の整理をしている。 彼は幼なじみの雲雀恭弥。 私の幼なじみは気がつけば並盛中の風紀委員長、不良のトップになっていた。 しかも教師でさえ恭弥に逆らえない。 こんなデンジャラスな幼なじみなんていないよねぇ。 ソファーでごろごろしながら、しみじみ思った。 「……、…なに?」 『何がー?』 「ジッと見ていたでしょ。何か用?」 『んー…仕事、終わらないのかなって…』 「暇なら帰っていいよ。」 『冷たいなー、いつも一緒に帰ってるんだからいいじゃん』 「バイクの方が楽だからだろ?」 『違う違う、ちゃんと理由あるから』 「何?」 『教えない』 「なんで?」 『幼なじみ、だから』 「なにそれ」 『……』 私たちは幼なじみ。 この関係が一番だって思う。 今更「好き」だなんて伝えたら、この関係が終わっちゃうような気がして言えない。 恭弥がいない時、ヒバードに告白の練習してみたことがある。 練習だけで胸がドキドキすると同時に切なくなった。 こんな調子じゃ本人にはとてもじゃないけど伝えられない。 「僕に隠し事かい?咬み殺すよ」 『……』 口ではそう言っても恭弥はトンファーを出さない。 彼はこちらに歩み寄ってきて柔らかなソファーへと腰を下ろした。 珍しく休憩でもするのかな? 『……?』 「……僕も名前に隠し事があるって言ったらどうする?」 『何それ!?なんで!?』 「幼なじみだから言わない。……気になる?」 『気になるに決まってるじゃん!』 「じゃあ、やっぱり言わない」 『う……』 「お互い様だよ」 『……』 「………」 じっと見つめたら恭弥も私をじっと見る。 お互いに負けず嫌いだし意地っ張りだし、おまけに素直じゃないから沈黙が続く。 この静寂を破ったのはパタパタと飛び回るヒバード。 ヒバードは応接室の中を飛び回り、ぽふっと恭弥の頭へと落ち着いた。 『ヒバード…』 ≪ナマエガスキッ≫ 『え……?』 「……っ!?」 『ね、ねぇ、恭弥…』 「なに…?」 『か、可愛いーっ!!』 「は……?」 『ねぇねぇ、恭弥!今の聞いたっ!?ヒバード、私が好きだって!!』 「………馬鹿で助かったよ」 『なに?今、何か言った?』 「…別に」 ≪スキッスキダヨッ≫ 『あぁ、もう!可愛すぎる…っ!!どこで覚えてきたんだろう…!!』 「………」 好きだと何度も繰り返してヒバードは私の肩に座る。 ふわふわの羽が頬を掠ってくすぐったい。 『ふふっ、可愛いなぁ…っ』 ≪キョーヤガスキッ≫ 『へ……っ!?』 「………」 ヒバードの言葉を聞いて恭弥は驚いたように目を見開く。 もしかして、ヒバードは私の告白の練習を覚えちゃったの…!? ど、どうしよう…!! 『……はは、ヒバード、きょ…、ギョーザが好きだって!!何、言ってるんだろーねっ!!』 「餃子じゃなくて恭弥って聞こえたけど?」 『そ、そう?なら、よかったね!!好きって言われて!!』 「……」 『ど、どうしたの…?』 「この子は僕の事をヒバリって呼ぶんだよね」 『……っ!?』 「…おかしいね。僕を名前で呼ぶなんて」 『……ハッ!まさかディーノさんが…!?』 「気色が悪いことを言わないでくれるかい。僕のことを名前で呼ぶのは名前だけだよ」 『…ー…ッ!!』 何とか色々と誤魔化そうとしたけれど恭弥はニヤリと笑ってる。 き、気付いてる!? その顔はバッチリ、気付いてるよね!? 「ねぇ…」 『な、な、なに…っ!?』 「僕たち、似たもの同士だね」 『え……っ』 「…同じこと、してたんだよ」 『……っ!?』 「ねぇ、僕は……」 …ー…名前が好き。 そう言って恭弥は私を強く抱きしめた。 初めてのOcm 「返事は?」 ≪キョーヤガスキッ≫ 「君は黙ってて」 ≪……≫ 「返事。」 『恭弥が、好き……です』 「………」 『…ー…っ』 まるで、当たり前だと言う様な笑顔、ちょっとずるい。 でもね。 そういう君がだいすき。 end 2009/01/21 |