十年の間、僕らの関係は続いている。
今では僕の隣には君がいるのが当たり前となった。

君は僕を名前で呼ぶようになって、僕は昔より君に溺れてる。

だけど、素直に気持ちを口になんて出さない。
そういうところ、変わらないねって君はくすくすと笑う。



『恭弥ー!!』

「名前、そんなに急いでどうしたんだい」



なんてね。
分かっているけど気づかないふり。

今日は五月五日。
今年もまた僕の誕生日がやってきた。
君が毎年、祝ってくれるから誕生日を忘れるという事はなくなった。

僕が今年も誕生日を忘れていると思っている名前は小さく笑って、僕の前に立つと口を開く。



『今日、恭弥の誕生日だよ!』

「……あぁ、そうだったね」

『ふふっ、また忘れてたの?』

「君が教えてくれるから覚えてなくてもいい」

『そ、そうだけど!ねぇ、恭弥!』

「……」



嬉しそうに、はしゃいで言葉を紡ぐ君の唇にそっとキスを落とす。
唇を離すと名前は突然のキスに驚いたようで目を大きく開いて僕を見ていた。



『い、いきなり何…!?』

「今更、キスくらいで驚かないでよ」

『いきなりされたら驚くよ!せっかく言おうと思ってたのに…』

「何を?早く言いなよ」

『遮ったくせに、よく早く言いなよとか言えるね…』

「……何か文句ある?」

『…ないです』

「……そう」

『……えっと、あのね、恭弥』

「ん……?」

『誕生日おめでとう、ございマス』

「……ありがとう、名前。」

『プレゼントもあるんだよ、部屋に行こう!』

「……ねぇ、僕、今年は欲しいものがあるんだけど」

『えっ、何なにっ!?すっごく珍しいね!』

「そうかい?」

『十年間で初めてだよ!何が欲しいのっ?』



既にプレゼントを用意しているみたいなのに君はパッと笑顔になって僕の「欲しいもの」を聞いてくる。

僕の欲しいもの。
それを言ったら君はくれるかな。

NOと言わせるつもりは少しもないけどね。



「……」

『恭弥…?』



数秒後の名前のリアクションが頭の中に思い浮かぶと自然に口角が上がる。

そんな僕を名前は不思議そうな瞳で見つめてる。
僕は気にせず名前の左手をとって薬指にエンゲージリングをはめた。



『え……?』

「何だい、その顔は」

『な、なに、これ…っ!?』

「指輪だよ、他に何に見える?」

『そ、そうだけど…っ、え、えっと、これってどういう事…っ!?』

「そのままの意味。今年のプレゼント。」

『……!?』

「これからの君も僕にくれる?」

『これ、からの私……っ?』

「そう。これからの十年後も二十年後、ずっとその先の君も欲しい」

『…ー…っ』

「……これからも僕の傍にいて」



そっと掬いとった柔らかい髪にキスを落として視線を合わせる。

名前は少し涙目になっている。
だけど柔らかく温かく微笑んで「はいっ」と元気な返事をして僕に抱きついた。












end



2008/05/05

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