好きな女の子を守るためにオレは雲雀さんの前に立ちふさがる。
雲雀さんが怖いけど、どうしても守りたい。

あぁ、でも、やっぱりだめだ。
オレがどんなに頑張っても雲雀さんには勝てない。

雲雀さんのトンファーがオレに当たる…!!



「うわぁ!ごめんなさい!雲雀さぁぁん!!」



バッと飛び起きるとオレはシーンとする部屋のベッドの上にいた。
辺りを見回しても名前を叫んだ人物はいない。

オレがいたのは、いつもと変わらない自分の部屋だった。



「あれ…?名前?雲雀さん…?」



あぁ、そういえば、学校から帰ってから昼寝してたんだっけ?
外を見ると、もうすっかり日が沈んでいて真っ暗。

どうやら、随分と長く昼寝をしてしまったらしい。



「じゃあ、今のは夢…?」



そっか、やっぱり夢だったんだ。
そうだよなぁ、あんな都合が良すぎる事なんて起きる訳ないよなぁ…!!



「……」



オレは夢の中で名前と二人っきりで帰っていた。
そうしたら、名前が雲雀さんとぶつかってしまう。

必死に謝っていたら雲雀さんはオレ達を見て群れないでよと言ってトンファーで殴りかかってきた。

いつもなら当たるのにオレは奇跡的に何度も避ける。
オレ、雲雀さんのトンファーを避けられるくらい強くなった?

驚いて、ぼーっとしていたら何故か雲雀さんが名前に声をかけていた。

あれ?その時に何か言ってたよな…?
確か「名前、沢田綱吉より僕にしなよ」だっけ?



「ムカつく…」



あーダメダメ!!思い出しただけで腹が立ってきた!!

そうだ!それで夢の中でもイライラしちゃって、つい言っちゃったんだ。
死ぬ気で名前を守るって。

現実だったら恥ずかしくて言えない。
そもそも、そんな危険な場面に出くわさない。

でも、その後はさすが夢。
オレは雲雀さんに絡まれた名前を助けることに成功。

それで……



『ありがと、ツナ…』

「ははっ、だ、大丈夫だった…?」

『うん!ねぇ、ツナ!すっごく、かっこよかった!』

「え…?」

『あのね、私…、私ね…』

「名前……?」

『……っツナの事、好きなの!』

「え…っ!?」

『ツナが、好き……』




ってな感じで名前がオレに抱きついてきて見上げて瞳を閉じる。
まるでキスを待っているような名前。

オレは緊張しながら名前の肩に手を置く。
それで唇を重ねようとしたら、また雲雀さんが出てきてトンファーで殴られるってところで目を覚ましちゃったんだよな。

あー…名前、可愛かったなぁ…!!



「あーあ、せめてキス……」

「キスがどうかしたのか?」

「だから、名前とー…って、リボーン!?いつからそこに!?」

「さっきからずっといたぞ」

「んなーっ!?」

「まったく恥ずかしい奴だな」

「オレの心を読むなーっ!!」

「一人で怒ったりニヤついたり顔を赤くしたり気持ち悪かったぞ、お前。引いたぞ。」

「しっ、仕方ないだろ!!絶対にありえない事ばかりだったんだから!」

「そうでもねぇだろ」

「はぁ?何がそうでもないんだよ」

「その気持ち悪い面を見てみろ」



気持ち悪いって言うなよ!リボーン!!
ムッとしつつもオレはリボーンから受け取った手鏡で自分の顔を見た。



「んなっ!誰だよ、ランボか!?人の顔に落書きしたの!!」

「……」



擦ってもまったく落ちないんだけどーっ!?
ゲッ!もしかして油性マジックで書いたのか!?

あーっ、もう!最悪だよ!!



「やっぱりダメツナだな」

「なっ!じゃあ、まさかイーピンかフゥ太が書いたのか!?」

「んな事を言ってんじゃねぇ、書いてある文字を読め」

「はぁ…?」



鏡越しだから分かりにくいけど、これってカタカナで二文字だよな?

えーっと…、意外と反対の文字って難しいな。
寝起きだから余計に頭が働かず、ゆっくり考えて答えが出た。

キとス?



「キス?」

「"スキ"に決まってんだろ、アホツナ。どんだけキスしてぇんだ」

「……」



スキ?
何をだよ、というか本当に誰がこんなの書いたんだ?

どうやっても落ちない。
手で擦るのはヒリヒリして頬が痛くなってきた。

顔を洗ったら落ちるかな。



「名前が書いたんだぞ」

「は…?」

「幸せそうにツナの寝顔を見てたな。」

「名前…?いくらなんでも、そんな嘘に騙されないからな、リボーン!」

「嘘じゃねぇ。ほら、皆で食べろって名前から差し入れだ」

「え…?」



リボーンから渡されたコンビニの袋にはお菓子がたくさん入っていた。
その中にはオレが名前に好きだって話したお菓子もあった。

って事は本当に名前がオレの部屋に来て、これを書いた…?



「リボーン!!それじゃ、このスキってオレのこと!?」

「さぁな、そこまでは知らねぇ」

「こっ、ここまで教えておいて…っ!?」

「明日、本人に直接、聞けばいいだろ」

「……!!う、うん…うん!そっ、そうだよな…!!」



鏡を見て、もう一度「スキ」という文字を確かめる。
そして、さっきまで、この言葉を必死に消そうとしていた自分を恨んだ。



だけど








消えないでよかった!



「あー、落とすのやだなぁ」

「さっきまであんなに消そうとしてたじゃねぇか」



end



2008/01/18

prev next

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -