今日はクラスメイトの名前の誕生日。

名前は笹川達と仲がいいから、オレ達とも自然に話す機会が増えた。
一緒にいると楽しくて、オレにとって特別な存在。

だから先日、笹川から名前の誕生日が今日だと教えてもらった時にプレゼントを贈ろうと決めた。
けれど何がいいのか分からず、ここ数日、うんうんと悩んでいた。

贈るからには、やっぱり喜んでもらいたいからな。
そう思っていても女にプレゼントを贈るなんて初めてで何を贈れば喜んでくれるのか分からない。

悩んだ結果、当日である今日まで決められなかった。

当日までには用意するって決めてたから二人きりで会う約束をこじつけておいた。
なのに用意、出来なかったなんてないだろ、オレ。



『山本君?』

「あー…っと、その…」

『……?どうしたの?』

「ごめん、名前!」

『えっ?何が!?』

「もう少し時間があれば…って、いくら時間があっても決められそうにねぇけど」

『ど、どうしたの?一体、何の話?』



名前は話が分かっていないようで目に見えて慌てて困っている。

今日、誕生日だろ?
そう気まずそうに頭をかいて呟くと「あ!」と声をあげた。



『山本君、私の誕生日、知ってたの?』

「あ…、あぁ、そりゃ…」

『ありがとう、すごく嬉しい!』

「……!」



困ってた表情がパァっと花が咲いたみたいに笑顔になった。
誕生日プレゼントも何もないのに、そんな笑顔を向けられちゃオレがプレゼントを貰ったような気分になっちまう。

何でもいいから用意するんだったな、と苦笑いを返した時、ふと思いついた。



「なぁ、名前、これから街に行かねぇか?」

『えっ?』

「あ…、もしかして、この後、予定あるか?」

『う、ううん!大丈夫、だけど。何で?』

「お前の誕生日プレゼントを買いに行こうぜ!」

『えっ!?わ、悪いよ!』

「それじゃオレの気が済まないんだって!だめか?」

『で、でも…』

「本当は用意しておくつもりだったんだけどなー」

『へ…?』

「何がいいのか分かんなくてよ」

『山本君…』

「だから、今から街に行って好きなの選んでくれよな!」



な?と同意を求めるように言うと名前はきょとんとした後、くすくすと笑った。



『嬉しい!』

「決まりだな!さっそく行こうぜ!」

『うん!』

「……」



嬉しそうにはしゃぐ名前に照れてしまうけど、喜んでくれたことが嬉しくて口元が緩む。
二人で出かけるなんて何だかデートみたいだ。



「あ……」



さっそく行こうぜ、と言ったけどオレは大事なことを忘れていて足を止めた。
名前も足を止めて不思議そうにオレを見ている。



『山本君、どうしたの?』

「わりぃ、言い忘れてた」

『え…?』

「一番、最初に伝えたかったんだけど、つい、うっかりしてたのな」

『……?』

「名前、誕生日、おめでとう!」

『あ……』



名前は驚いていたけれど、すぐにありがとうと、はにかんで笑った。
そういう顔を見ていると名前が好きだと改めて思った。

これからもオレの傍でそうやって笑ってくれたらいいのに。



「……」



あれこれ考えて悩むより、現実にしたいなら、まずは行動あるのみだよな!



「それと、もう一つ伝えたいことがあるんだ」

『もう一つ?』

「あぁ、聞いてくれるか?」

『……?』



この気持ちを伝えたら名前はどんな風に思うだろう。
嬉しく思ってくれるか、それとも困るだろうか。

柄にもなくドキドキしてる心臓。
緊張っていうよりも早く伝えたいと高鳴ってる。

不安はあるけどな。
伝えねぇと何にも始まらないだろ?



「オレ…」

『……?』

「名前のこと、好きだぜ」

『……っ!?』



真っ直ぐ見つめて伝えたら、名前の顔が一気に赤くなる。
名前は、その顔を見せないように俯くと落ち着かせるために深呼吸を一つ。

そして、そっと顔を上げた名前はオレに最高のプレゼントをくれた。












たまらなくなって、ぎゅっと抱きしめた。



end



2010/3/29
葉桜弥生様へ
三周年フリリク企画
リクエストありがとうございました!

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