よく晴れた日の放課後。
私はツナと獄寺とで部活中の山本を見ていた。

ツナ達とはクラスメイトで前から仲良し。
だけど、部活中の山本を見るのは初めて。

走りこみやバッティング、どれも練習とは思えないほど真剣に取り組む姿は、いつもの山本の雰囲気と違っていた。
傍から見ていれば絶対にやりたくないような厳しい練習も好きだからこそ続けられるんだろう。

獄寺は野球部に興味がないのか「ケッ」とした顔で眺め、私とツナはポカーンと口を開けて見ていた。

部活中と普段の彼とのギャップに驚いてしまう。
他のメンバーと動きが違うっていうか、ただただすごいなぁと思い見惚れてしまっていた。



「さすが、山本だね」

『ねー!さすがだよ!』

「あれくらいどうって事ねーだろ」

『じゃあ、獄寺、山本とキャッチボールしてみる?』

「………」

『にしても、バットを振るにしても音が違うよね、びっくりしちゃった』



一年生の頃から期待されているだけあって山本は他の野球部員より実力がずば抜けている。
それは元々、恵まれていたんじゃなくて、こうして山本が頑張っているからだ。

私なんて部活に入る気になれなくて、やりたい事も見つけられず毎日、ダラダラと過ごしていた。
そんな時に山本はずっと努力してたんだよね。

部活に一生懸命な山本を見て、何か部活に入っておけばよかったなと思った。



『…ツナってさ、部活に入るなら何部?』

「えっ、いきなりどうしたんだよ、名前」

『だって私達、帰宅部じゃん?だから入るなら何かなーと思って』

「帰宅部って言えば聞こえはいいけどね。んー、部活かぁ…」

『野球部、陸上部、サッカー部…、あと持田先輩がいる剣道部とかはどう?』

「運動系の部活なんて無理だよ!」

『じゃあ、パソコン部とか文芸部…、手芸部?』

「それもちょっと……」

『あとは調理部、吹奏楽部に軽音部……』

「料理や音楽もなー…」

『改めて考えると山本みたいに自分にはこれだ!って言うのはないよね』

「お前ら、何の話してんだ?」

『あっ、山本!どうしたの?』

「今、休憩なんだよ。あ、名前、そこのタオルを取ってくんね?」

『これ?はい、どうぞ!』

「サンキュー」



山本はタオルで汗を拭くとスポーツドリンクを飲みながら先程の会話へと戻した。
私はツナ達と話していた事を山本に話す。



『部活の話してたんだよ』

「部活?名前って何か部活入ってたのか?」

「入ってたらアホ面でお前の練習を見てねぇだろうが、野球馬鹿」

『アホ面って何よ!』

「ぼけーっと口を開けて見てただろうが」

『そう言うならツナも同じ顔して見てたよ!』

「ばっ!十代目とてめぇを一緒にするんじゃねぇ!」

「おいおい、そこら辺にしとけって!つか、ツナも獄寺も帰宅部だよな」

「う、うん…」

「部活なんて面倒だから入らねぇよ、ですよね、十代目!」

「うーん、オレの場合は入部しても足を引っ張ってばかりになるからというか…」

「ん?」

「ははは……、何でもない…」

「そっか?」

「う、うん…、気にしないで、山本…」



ツナの言葉は、どんどんと小さくなって最後には笑って誤魔化した。
最近は割とダメツナって呼ばれないのに、自信がついてないみたい。

ツナは話題を変えたいのか急に大声を上げて私に話しかけてきた。



「あ…、あぁ!オレの事は置いておいて!名前は?」

『へっ?』

「名前は何か入りたい部活とかないの?まだ二年だし十分、活動時間あるんじゃない?」

『え…、うーん、そう言われるとな…』

「名前は何か入りたいのか?」

『山本を見てたら部活もいいなぁと思って…、なんていうか青春したくなってきた!』

「ははっ、そっかそっか。じゃあさ!」

『なに?』

「野球部マネとかどうだ?」

『マネって、マネージャー?』

「おぅ。まぁ、試合記録を取ったり…、雑用も多いけどな、やりがいあると思うぜ」

「名前がマネージャーなんて、どうなっても知らねぇぞ」

『し、失礼だな、獄寺!』

「ははっ、名前だって簡単な仕事なら出来んだろ。なんだったらツナも一緒にどうだ?」

「えっ?いやいや、オレは遠慮しておくよ!」

『……』



野球部のマネージャーかぁ。
野球部なら山本も一緒だし楽しそうだなって思う。
というか、いいかもしれない。

四人で話していると休憩時間は終わりのようで山本はまた後でな、と一言残し駆け足でグラウンドへと戻って行った。

本当は最後まで見ていたいけど、私はそろそろ帰らないといけない時間。
ツナ達は山本と一緒に帰るみたいで先に帰るのは悪いかなと思いつつ、挨拶をそこそこにして帰ろうとした。



「じゃあね、名前」

「道草すんじゃねぇぞ」

『お母さんみたいなこと言わないでよ、獄寺』

「な…っ、誰が母親だ!」

『獄寺って意外と心配性だよね』

「てめぇの心配なんてしてねぇよ!真っ直ぐ帰れ!」

『はいはい、道草しませんよーっだ!お母さん!』

「……っ」

『ばいばーい!』



顔を赤くして怒る獄寺を笑い、この場を離れる。
少し歩いたら振り返って獄寺を見ると、まだ落ち着いてないようで私をギンと睨んでいた。

私はそんな獄寺にまた笑って、振り返ったまま手を振り夕焼けになった空の下を歩く。



「おい!ちゃんと前、向いて歩けよ、名前!」

『やっぱりお母さんじゃん、獄寺…』

「てめっ、また母親呼ばわりしやがったな…!!」

『ゲッ、何で聞こえるのよー!』

「オレは耳がいいんだよ!前向け、前!」

『はいはい、前向いて真っ直ぐ帰りまーす!』

「はい、は一回だ!!」

『……、…お母さんよりうるさい。』



今度は、本当に小さな声で呟いたのに獄寺には聞こえたようで今にも、こちらに来て文句を言いそうな雰囲気。

私は慌てて前を向いて歩いた。



『……』



先に帰るなら、さっき山本にも挨拶しておけばよかったな。
どうせまた明日会えるのに、と思っても妙に気にしてしまうのは何でだろう。

今日はいつもと違う姿を見てすごいな、とか夢中になれるものがあるっていいなって思うのと同時に「かっこいい」と思ったから?



『………』



校門まで歩いて振り返って山本を見ると部活中。
その姿を、もう少し見ていたいなと思ってしまい足を止めてしまう。

こっちに気づく訳ないか。
いい加減、帰らなきゃ。

そう思って一歩、踏み出したら大声で名前を呼ばれた。
バッと振り返るとグラウンドの真ん中から山本が大きく手を振っていた。



『あ……』



帰宅する生徒がたくさんいる校門で大声を出すなんて目立ってしまう。

だけど遠くで手を振ってくれている山本を見ていると、それくらいどうってことないと感じる。
気がついたらスッと深呼吸して私も大きく手を振って「また明日ね!」と大声で挨拶をしていた。

おぅ!また明日な!なんてニカッと笑う山本を見ると、くすぐったい気持ちになった。



『……っ』



叫んだと同時にすっきりとした胸の奥。
また明日、その言葉だけなのに嬉しくなった。



『あぁ、そっか…』












些細なことが嬉しくて、君の笑顔がキラキラしてる



end



2009/05/15
二周年フリリク企画
月野梓様へ!
リクエストありがとうございました!

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