野球部エース、山本武は私の彼氏。
山本武と言えば学年で知らない人がいないってくらい有名。

皆の中心的存在だから、いつもタイミングを逃しちゃったけど今日はちゃんと「部活、頑張って」って伝えたい。

頑張ってる彼が大好き。
伝えられてないけど応援の気持ちなら誰よりもあるんだ。


***


放課後になり今日こそは!と意気込む。
だけど"いつも"タイミングを逃しているだけあって二人きりの時間はあっという間に彼らによって終了してしまった。



『…ね、ねぇ、武』

「ん?どうしたんだ、名前」

「おい、野球馬鹿」

「ん?獄寺、どうしたんだ?ツナも一緒なのな」

「あー、えっと、いきなりごめん。山本って今日、部活なんだよね?」

「あぁ、そうだぜ!それがどうかしたか?」

「うちで宿題しないかなって思ってたんだ」

「そういや、宿題が出てたな…」

「忘れてたのかよ、お前」

「ははっ、部活の事で頭がいっぱいでな!」

『……!!』



タイミングを逃しているより私に運がないだけ…?
せっかく二人きりだったのに後ろからツナ君と獄寺君に声をかけられたら武はそちらを向いてしまった。



「部活、頑張ってね、山本!こっちは気にしないでいいから!」

「サンキュー!あ…、でも、部活が終わったら顔を出すな。宿題、頼むぜ、ツナ!なんてな」

「いやぁ、オレだけじゃどうなるか…」

「十代目!オレがいるから大丈夫っスよ!!お任せください!!」

「頼もしいのなー、獄寺。んじゃ、頼むな!」

「なっ!!てめぇに教える訳ねーだろ!!」

「まーまー、いいじゃねーか!」

「よくねぇよ、野球馬鹿…ッ!!」

「ははっ、厳しいのな、獄寺!…っと、オレ、そろそろ行かねーと」

「あっ、うん!じゃあ、また後で!!」

「おぅ!名前も、また明日な!」

『あ……、う、うん!ばいばい…』



…って、私!
普通にばいばいって言ってる場合じゃないでしょ!?
「ばいばい!部活、頑張ってね!」って、今ならごく自然に一言、言えたのに!



『あぁ、もう!私の馬鹿っ』

「ど、どうしたの、名前ちゃん」

『ご、ごめん、ツナ君!ちょっと武に用があって…!』



教室を出て行く武の後を追う。
帰宅する時間だから廊下は騒がしく生徒がたくさんいる。

このままでは、すぐに見失いそうで私は慌てて彼の名前を呼んだ。



『た、武…っ!』

「ん…?あれ?どうしたんだ、名前」

『ちょ、ちょっと、言いたい事が…っ』

「どうした?」

『その…、こっこれ…っ』

「……?スポーツドリンク?」

『えーっと!その…部活、頑張ってね!』

「……!!」

『…って、言いたかったの。今更のような気がするけど』

「……」

『ずっと武に頑張ってねって言いたくて…さ。だけど、いつもタイミング逃しちゃってて…』



自分のタイミングの悪さに苦笑する。
武はスポーツドリンクを受け取ると私をぼーっとして見ていた。

不思議に思ってどうしたの?と首を傾げると武は慌てて話し出した。



「あー…いや、その…名前…」

『ん……?』

「……やっぱ、名前に応援されるのが一番、嬉しいのな」

『……!!』

「…サンキュ!!」



ニカッと見惚れるくらいの爽やかな笑顔にきゅんとする。
応援しているつもりが、その笑顔に元気をもらっちゃう。



「じゃあ、行くな」

『うん!』



頭をくしゃりと撫でられてくすぐったい。
手を振って見送っていると廊下を曲がるところで武が「名前のためにカッ飛ばしてくるな!」と大声で言った。

他の生徒たちもいて恥ずかしかったけれど嬉しくて、私も周りなんて気にせずに武の背中に向かって叫んだ。



武、頑張れ、って!



end



2009/01/12

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