至門中学からやってきた転校生のSHITT・P!こと、しとぴっちゃん。

隼人に言わせれば彼女はUMAらしい。
地底人だとか何とか興奮して楽しそうに語っていた事が記憶に新しい。

私はと言えば彼氏である隼人の意外な一面を見て心の中が若干もやもや。

夢中になれるものがあるのは、いい事だよ?
それを知りたいと思って調べるのもいいこと。



『……(だけど)』



いくら変わっていてもSHITT・P!さんは同年代の女の子でしょう!?
しかもスタイルいいし目は大きいし唇ふっくら!
普通にしていれば絶対に美人だと思うんだけど!

そんな彼女を追いかけて恋人である私は放置だなんて正直な話、面白くない。
しかも必ず今日は何があったとか瞑想してたとか私に話してくるし!

あーあ、私には興味ないのかな、って思っちゃう。

ここの所、元気が出ないのは、この悩みのせい。



『遅くなっちゃったな…』



他のクラスの友達と話をしていたら、いつの間にか下校時刻になり私は教室に鞄を取りにやって来た。
自分のクラスである二年A組に入ると皆は既に帰ったみたいで物音一つしない。

ちなみに隼人は授業が終わると挨拶そこそこSHITT・P!さんを追い掛けて帰ってしまった。



『……はぁ、帰ろ。隼人のばー…、……!?』



ばか、と呟こうとして何気なく視線を移した教室の後ろを見て開いた口が塞がらない。
だってSHITT・P!さんが天井にぶら下がってるんだもの!



「……」

『………』

「……」

『あの、SHITT・P!さん…?』

「………」

『まだ帰らないの…?』

「……」



シーン。
微動だにせず声も出してくれない。
これが隼人が言っていた噂の瞑想!?

それとも交信中!?



『げ、下校時刻だよ?』

「……」

『えっと…』



隼人はSHITT・P!と話せたんだぜっ!って嬉しそうにしていた。
隼人とは話すのに何で私とは会話してくれないの!?

どうしようかと今まで隼人から聞いたSHITT・P!さん情報を思い出していると、ある事に気がついた。

そういえば確か、隼人はSHITT・P!じゃなくて…



『し……』



隼人の話とSHITT・P!さんの自己紹介を照らし合わせるとバッチリ話が合う。
私の記憶が正しければ……



『し、しとぴっちゃん?』

「……!」



おずおずと、しとぴっちゃんと呼ぶと彼女はパチッと目を開けて床に下りた。
そして私の前に立ち、大きな瞳で見つめる。



「その呼び方、嬉しいな。苗字さん」

『あ、あの、しとぴっちゃん…って呼んでもいいの?』

「うん、いいよ。呼んでって言ったの、私だよ。」

『あ…、ありがとう…』

「ありがとう?面白いこと言うね、苗字さん」

『え?』

「この話、終わり。早く行ってあげた方がいいよ」

『……?何が?』



しとぴっちゃんが指をさしたのは窓。
窓に何があると言うんだろう?

不思議に思い外を見ると校門の所に隼人がいるのが見えた。
携帯を開けては閉じて落ち着かない様子。



『隼人…?』

「うん、獄寺君。」

『何で…』

「カワイイよね。さっきからあぁやって、そわそわしながら苗字さんのこと待ってるの。」

『私を待ってるんじゃなくてSHITT・P!……しとぴっちゃんの事を探してるんじゃ…?』

「……?違うよ。苗字さんだよ」

『だけど…』



しとぴっちゃんは私の隣に来て隼人を興味深げに見つめる。
そんな彼女を見つめると私の視線に気付いて、くすくすと笑った。



「獄寺君のことをジーッと見てたから分かるの」

『ジーッとって…も、もしかしてしとぴっちゃん、隼人のこと好き…?』

「うん、好きだよ、カワイイから。」

『……!?』



自分で聞いておいて何だけど驚いて言葉が出ない。
こんなに、はっきり好きって言われるなんて色々、複雑だよ…!!

どう反応していいのか分からずに、しとぴっちゃんが話すのを待った。



「あと、あなたと一緒にいる獄寺君はカワイイからもっと好き」

『へ……?』

「カワイイし面白いの。あなたが山本武や沢田綱吉、他の男子。女子でも話してると落ち着かない様子で見てるんだよ。ほら…」

『これは…』



しとぴっちゃんが見せたのは京子と話してる私の写真。
その後ろには隼人、ツナ、山本君が三人で話してる姿が写りこんでいる。



「よく見て。苗字さんを見てるの」

『……』



言われて見れば後ろに映り込んでる隼人は私を見ているようだった。
視線に気づいたら恥ずかしくなって顔に熱が集中する。



『は、隼人…』

「ね?」

『う、うん……でも、しとぴっちゃん、何でこんな事を教えてくれるの?』

「何で…?その質問、よく分からないな」

『しとぴっちゃん、隼人の事が好きなんでしょう?私、一応、つ、付き合ってるから…その…』

「獄寺君はカワイイから好き。エンマ達も好き。でも一番は自分。自分を一番、愛してる。」

『へ…?』

「………?」

『恋愛感情の好きじゃないの?』

「レンアイ?」

『う、うん…』



ハテナマークを浮かべているしとぴっちゃん。

どうやら隼人がしとぴっちゃんを観察するように、しとぴっちゃんも隼人を観察していたらしい。
自分の勘違いに思わず笑ってしまうと、さらにハテナマークを浮かべていた。



「面白い人。」

『え?』

「苗字さん、獄寺君と同じくらいカワイイな」

『はい!?』



そう言うと、しとぴっちゃんはジーッと観察するような視線で私を見た。
どうしたものかと内心、焦っていると、しとぴっちゃんが話し出した。



「そういえば獄寺君、苗字さんの事を話してたな」

『え!?』

「私がぼーっとしてたらぶつぶつ話し出すの」

『……?』

「お前もUMAと言えど女性型だろ、人間の女の気持ち分からねぇかって」

『……』



えぇぇ、UMA認定してる相手に恋愛相談してるの、隼人ーっ!?

きっとUMA認定の相手でも照れ臭そうにしてるんだろうな。
そんな姿を想像しまうと可愛くて笑っちゃう。



『ふ…っ、はは、隼人ってば…っ』

「カワイイよね」

『うん、色々、心配して損しちゃったよ…、話してくれてありがとう!』

「ふふ…」



二人で笑っていると私の携帯電話が鳴った。
出ようと思ったら切れてしまい着信履歴を見ると「獄寺隼人」の文字。

電話だなんて珍しい。
本当に待ってくれているみたいだ。

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