絶賛片思い中の彼、獄寺隼人君と放課後の教室で二人きり。
ツナ君達を交えて皆で話す機会は増えたけど二人きりなんて初めてで緊張しちゃう。



「お前、まだ残ってたのか」

『う、うん、ちょっと先生に用事があって話してたの』

「へぇ」

『獄寺君はどうしたの?てっきり、もう帰ったのかと思ってたのに』

「十代目が他の教室で補習を受けてるから待ってるんだ」

『あぁ、この間のテストで赤点の人は補習だって言ってたっけ…』

「お前は大丈夫だったみてぇだな」

『うん、可もなく不可もなく普通の点数だった。獄寺君は?』

「この学校のテストならちょろいもんだぜ」

『え……?』



獄寺君は自分の机をガサゴソと漁り取り出したのは、この間のテスト。
点数を見ると丸ばかりで「百点」の文字が大きく書かれていた。



『嘘!百点だったの!?』

「まぁな」

『すごいね、満点だなんてっ!』

「たいしたことねぇよ」



獄寺君は机に座ると、暇なのか百点の答案を折り始める。

何をしてるんだろう?
不思議に思い近くに寄って、まじまじと作業を見つめた。



『折っちゃっていいの?』

「答案なんていらねぇからな」

『ふぅん……、あ…、それって紙飛行機?』

「あぁ」



慣れているのか、あっという間に紙飛行機が出来上がった。

獄寺君はテストの答案で出来た紙飛行機を教室に飛ばす。
綺麗に折られた紙飛行機は数秒、宙を飛んで黒板にこつんとぶつかり床に落ちた。



『わーっ、結構、飛ぶんだね!』

「まぁ、コツさえ掴めばな」

『そうなんだっ!ね、私も飛ばしてもいい?』

「あぁ。」



紙飛行機を拾い上げて飛ばしてみる。
だけど獄寺君が飛ばしたようには飛ばず、へろへろふらふら。

数秒も持たずに情けなく床に墜落してしまった。



『あ、あれ?』

「へたくそ。0点だな、こりゃ。」

『し、仕方ないじゃん!意外と難しいんだもん!』



獄寺君はくっと笑い立ち上がる。
紙飛行機を拾い、お手本を見せるようにもう一度、紙飛行機を飛ばした。

獄寺君が飛ばすとやっぱり綺麗。
スイーッと風に乗って墜落する事なく静かに床に着地した。

その様子をぼーっと見ていると獄寺君は「どうだ?」と言うように口角を上げた。



『ひゃ、百点…、です…』

「当たり前だ」

『うー…、どうしてこうも違うんだろ…』

「お前は手に力が入りすぎなんだよ」



獄寺君は再び自分の席に座る。
私は紙飛行機を拾い獄寺君の隣の席に座った。

そして、紙飛行機を手に持ち飛ばす練習をする。
獄寺君は私の様子を机に肘をついて見ていた。



「そんなんじゃまた、すぐ墜落だな」

『う……』

「……おい」

『ん?なぁに?』

「角度はこうだ」

『え…?』



獄寺君は私の手に触れて角度を教えてくれた。
いきなりの事でびっくりして紙飛行機を放してしまうと机の上に小さく音を立てて落ちた。

獄寺君に触れられた手が、熱い。



『…ー…っ』



ヤバい、顔が熱い。
絶対に赤くなってる…!!

獄寺君は私の反応を見て重なっていた手をパッと離した。



「わ、悪かったな。つい…」

『う、ううん…、だ、大丈夫…』

「………の割には嫌そうじゃねぇか」

『え…!?』

「…ー…何でもねぇよ」



今の言葉の意味はどういう事?
もしかして、獄寺君、私が嫌がったと思ったの?



『……』



違うよ、全然ちがう。
嫌だったんじゃないよ。

そう言いたいけれど、言ってしまったら、きっと告白みたいになっちゃう。



『…ー…っ(…こ、こく、はく)』



告白なんて人生初。

このまま勘違いされて、ぎくしゃくしちゃったら嫌。
でも、告白なんてしちゃって振られたら、もっとぎくしゃくしちゃう。

ど、どうしよう…!!



「…なぁ、お前、帰らねぇの?」

『え…っ?』

「……いつまでも、オレといたって、つまらねぇだろ」

『そ、そんなことない!』

「……!」

『わ、私、その…』



私がいきなり大きな声を出したから獄寺君は驚いていた。
そういう私もとっさに出てしまった自分の言葉に驚いた。



『……っ』



獄寺君と一緒にいてつまらないなんて、そんな事、ありえない。

勘違いされたままじゃ、いや。

そう強く思ったら気持ちが止まってくれなくて、どんどんと言葉が溢れてくる。



『い、嫌じゃなかったの…』

「名前…?」

『む、むしろ嬉しかった、って、言うか、その…っ』

「はぁ…?う、嬉しい…!?」

『う、うん…っ、だ、だって、私……』

「……?」

『ご、獄寺君のこと、す、すき……、だから…』

「……!」

『…ー…っ!!』



あぁ、もうだめ!
全て言葉にしてしまったら顔から湯気が出そうなくらい熱くてドキドキする…!!

思い切って告白したら獄寺君を直視出来ず俯く。
獄寺君は何も言ってくれないから静けさが余計に気まずく感じちゃう。

とうとう耐え切れなくなって私は勢いよく立ち上がると自分の鞄を持って教室を飛び出した。



『わ、私、帰る!』

「な…っ!?ちょっ、待て、名前!」

『ばいばい!』



聞く耳を持たず教室を後にする。
廊下には私の足音だけが響く。

獄寺君は追いかけて来てないみたいで、ほっとするけれど同時に切なくなる。

やっぱり告白なんてするもんじゃなかった!私のばかっ!

自分の計画なしの行動に涙目になりつつ下駄箱へ到着。
追いかけて来てないから急ぐ必要はないけれど、一刻も早く学校から出たくて靴に履きかえて外に出た。



「おい、名前!」

『……!?』



獄寺君の声。
その声がした方を見ると獄寺君が教室の窓から私を見下ろしていた。
心なしか少し顔が赤く不機嫌そうにむっと口を尖らせてる。

……もしかして、一方的過ぎて怒らせちゃった!?



「言い逃げしてんじゃねぇよ」

『う……、ご、ごめん…っさっきのは忘れて…!!』

「名前」

『な、何…っ!?』

「まだ終わってないだろ」

『えっ!?何が…!?』

「手本、見せてやるよ」

『……!』

「受け取れ」



そう言って獄寺君は先程の紙飛行機を私に向かって飛ばした。
受け取れって、その紙飛行機を?

すいーっと私の方に飛んで来る紙飛行機。
手を伸ばして、あと少しと言う所で強風が吹き、紙飛行機を攫った。



「んなーっ!?」

『わ……!?』

「ばっ!おま…っ!早く追いかけろ!!拾え!!」

『えぇっ!?何で!?』

「いいから拾え!!早く!」

『でも、いらないんじゃなかったの…!?』

「それとこれとは別だ!!走れ!!」

『……!?』



紙飛行機が風で飛ばされると獄寺君は窓から身を乗り出して血相を変える。
訳も分からず言われるまま飛行機を追いかけて拾い戻った。



『はぁ……、ひ、拾って来たよ…』

「……そうかよ」

『うん……』

「………」

『獄寺君……?』

「……」



えーっと。
この沈黙は一体、何?

言われるままに飛ばされた紙飛行機を追いかけて拾って来たのに、どうして黙っちゃうの?

意味が分からず窓に肘をついて私を見ている獄寺君に首を傾げて見せた。



「…〜…気づけっての、馬鹿名前」

『気づけって、何を?』

「紙飛行機を見ろって言ってんだよ!」

『紙飛行機?』



グラウンドまで飛ばされ土で少し汚れた紙飛行機。
獄寺君に言われた通りに手にした紙飛行機を見ると翼の部分に百点の文字が見える。

そして、その下には「オレも名前が好きだ」と書かれていた。



『あ……!!』

「…〜…っ!」



驚いてパッと顔を上げて獄寺君を見ると先程の私のように顔を赤くして視線を外していた。



『これって、さっきの返事…っ!?』

「他に何があるって言うんだよ」

『ほっ、本当に?』

「…嘘なんてつくかよ」

『……っ』



告白の答えを書いて飛ばしたから必死になって紙飛行機を拾えって言ったんだ。

嬉しくて獄寺君を見上げて笑う。
そんな私を見て獄寺君は照れ臭そうに微笑んだ。



『……っ』



紙飛行機のお手本は0点だけどね。

私を嬉しくさせてくれた答えはテストの点数の通り、花まる百点!












今度は意地悪な風に負けないで届いてね!



end



2011/05/02

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