寒い寒い二月。
まだ夕方、六時前だっていうのに辺りは真っ暗。
学校からの帰り道、私は自分の手を温めながら人けのない住宅街を歩いていた。

冷たい風に押されて自然に早足になる。



『寒ー…っ!……あ』



ぶるっと震えたら、ある事を一つ思い出した。

そういえば、今日はツナに借りたゲームを返そうと思ってたんだ。
学校まで持って来てたのに返すタイミングを逃してしまいゲームは鞄の中。

すぐに返さなくてもいいって言ってくれてたけど貸してもらって随分、経つから今日のうちに返したいなぁ。



『うーん、家に寄ってみようかな…』



立ち止まり時計を見て数秒、考える。
六時前なら大丈夫だよね?

そうと決まれば方向転換。
私はコンビニに寄って差し入れのお菓子とジュースを買った。
少し前にツナが好きと言っていた季節限定のお菓子も忘れずに購入。

ツナの家に着いてチャイムを押すとツナママやビアンキさん、リボーン君にランボ君、イーピンちゃんやフゥ太君が出迎えてくれた。

相変わらず賑やかだな、と思いながら温かい家に上がらせてもらった。



「名前ちゃん、よかったらお夕飯を食べてってね」

『あ、ありがとうございます!』



ツナママに挨拶をそこそこにして私はツナの部屋へと向かった。
ツナの部屋の前に来ると中は静かすぎて本当にいるのかと首を傾げる。

コンコンとノックしても応答がない。
部屋を覗くとツナは間抜けな顔をしてベッドで眠っていた。



『……寝てるし』



最近のツナはかっこいいと思ってたけど気のせいだったみたいだ。
この姿はかっこいいとは程遠い。

幸せそうな顔して布団を巻き込んで丸くなり眠っているツナは、まるでハムスターみたい。



『ふふ、寝る子は育つって言うけど、あれ、嘘だね』

「……」



眠ってるツナのほっぺを興味本位で突いてみた。

つんつんと突っつくと、ツナはくすぐったそうに眉をしかめる。
さすがに起きちゃうかな?



「……ん」

『あ……』

「くー……」

『……って、起きないんだ』

「ん…ー…」

『………』

「……」

『……咬み殺すよ』

「……っ!」



眠っているツナを見てたら悪戯したくなっちゃって耳元で出来る限り低い声で「咬み殺すよ」と囁いた。

いくら何でも反応しないだろうなと思っていたのに効果抜群だったようでツナはびくっと反応した。

幸せそうな寝顔は一変、今は眉間に皺を寄せて苦しんでいる。

これは、まさか夢に雲雀さん、ご登場?



「…ー…ひ…ばり…さん」

『えっ、嘘…!?』

「名前は…悪くない……です…か、ら…」

『……』

「………っ」



えっ?夢の中の私が何かやって雲雀さんを怒らせたの!?
ちょっと失礼じゃないか、ツナ君よ。

雲雀さんに喧嘩を売るなんて、そんな恐れ多い事しないよ!



「死ぬ気で…名前……守…る…」

『え……!?』

「……」



私を、守る?
その寝言を聞いて体温急上昇。
同時にカァァと熱くなる頬を両手で押さえた。



『……っ』



ツナが私を守るって言ってくれたからって何でこんなにドキドキしてるんだろう?
だけど、もし獄寺や山本に言われても、きっと今みたいな気持ちにならない。

きっと、ツナだから、こんなにドキドキして嬉しくなってる。



『ツナ…』

「…ー…名前」

『……』

「………」

『……よし!』

「……」

『ちょっと、ごめんね、ツナ…』

「ん………」

『悪戯は…これで最後だからー…っと出来た!!』



さーてと。
ツナママには悪いけど、お夕飯はまた今度、ご馳走になろうっと!
今は恥ずかしくて、ツナと顔を合わせられないもん!



『おやすみ、ツナ…』



ふふ、と微笑んでツナの家を慌ただしく後にした。
寒い風に吹かれる帰り道に思い出すのは、幸せそうなツナの寝顔。



それともう一つ。








頬に書いた「スキ」って言葉!



そういえば、あのペンは水性?それとも油性?

あっ!ゲーム返し忘れた!

……ま、いっか!明日、返そうっ!



end



加筆修正
2009/5/17
444444hitキリリク、朝比奈様へ!

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