せっかくのクリスマスなのにタイミング悪く私は風邪をひいてしまった。
おかげで計画していたクリスマスパーティーが台無し!

今頃、みんなはツナの家でクリスマスパーティー中なのに私は家で一人。

一応、恋人である隼人は敬愛するツナこと"十代目"の方に行ってしまった。
私の事は気にしないで楽しんで来てよ、と言ったものの、いざ本当に行ってしまうと寂しくて仕方がない。



『お母さん達もどこか出かけちゃうし最悪ー…』



大分、良くなってきたからなのかベッドに横になっていても眠れない。

温かくして少し起きてようかなぁ。
あんまり気乗りしないけど眠れないから、だるい身体を起こしてベッドから下りた。



『はぁ…、リビングに行こう……』



そろそろ外も暗くなってきた。
リビングでぼーっと過していれば、そのうち家族も帰って来るだろう。

そう思いながら、ふと自室の窓から外を眺めると家の前に見慣れた人物の姿があった。



『……へ?』



私の家の前を行ったり来たりしてるから、たまたま通りがかった訳ではなさそう。

ツナの家でクリスマスパーティーをしてるんじゃないの?

何で私の家の前でうろうろして怪しい不審者をやってるの?

声をかけてもいいものだろうかと悩んだけれど窓を開けて彼の名前を呼んだ。



『隼人!』

「……ッ!?」



まさか見つかるとは思ってなかったからなのか大げさに驚いて私の方を見ると咥えていた煙草を地面に落とす。
その顔が面白くてくすくすと笑うとチッと舌打ちをして口を開いた。



「……よぉ」

『どうしたの?クリスマスパーティー、もう終わったの?』

「いや、十代目達はまだ…」

『そっかー、隼人は何でここに?』

「……、買出しの途中だ」

『ふぅん……』

「んだよ、文句あるのかよ。この道がたまたまコンビニに行くのに丁度よかっただけだ」

『えっ?この道じゃ大分、遠回りのような…』

「……ッ細けぇ事は気にすんじゃねぇ!つか…」

『なーに?』

「……元気そうじゃねぇかよ」

『もしかして心配してくれてた?嬉しー…』

「してねぇよ、アホ」

『あ…、あぁ、そう……』

「……」



病み上がりの恋人に向かって即答でアホはないでしょ、アホは。
これでも昨日は起きれないくらい寝込んでたんだからね…!熱が出てたんだからね!!



『……』



一言二言、会話をしたあと、沈黙が流れて、どうしようかと思っていても話しかける事はせず隼人と顔を合わせていた。
窓を開けていると冷たい風が入ってきて思わず震えると隼人が沈黙を破る。



「おい、名前」

『ん?何?』

「…ちょっと出て来れるか?」

『えっ?』

「その格好のままでいいからさっさと来い」

『……』



結局、そう言うなら「来れるか?」じゃなくて最初から「さっさと来い」って言ってよね、隼人!
心の中で文句を言いつつも上着を羽織って外に出ると一際強い風が吹いた。



『寒…っ』

「……悪かったな、そんなに時間は取らせねぇよ」

『………』

「んだよ、その顔は」

『謝るなんて珍しい』

「…気が変わった。中に入って寝てろ。一応、病人扱いしたオレが馬鹿だったぜ。」

『えぇ!?ちょっ、せっかく外に出て来たのにそれはないでしょ!?用はなに!?』

「……」

『隼人!ごめんってば!』

「……、…ほらよ」

『え……?』



ずいっと差し出されたのはビニール袋。
どうやら私に買って来てくれたようで中を覗くと風邪でも食べやすそうなデザートが入っていた。



『プリンとゼリー?』

「コンビニのだけどな」

『私に?』

「…まぁ、な。それ食ったらちゃんと寝ろよ」

『ふふ、ありがと……、…っしゅ!』



冷たい風に吹かれると背筋がぞくぞくして、くしゃみをしてしまった。
くしゃみをした私を見て隼人は珍しく慌てた様子を見せる。



「お、おい、大丈夫か?」

『大丈夫……、多分…』

「お前なぁ……」

『大体、出て来いって言ったの隼人じゃない。」

「………」

『…えっと、来てくれてありがとう、隼人』

「……」

『…って、たまたま通りかかっただけー…』



だったっけ?と笑って見せようと思った瞬間、ぎゅっと抱き締められ一瞬、息が止まる。

隼人は着ているダウンジャケットで私を包むように抱き締める。
ぬくぬくと温まるけれど、これでは風邪とは違った意味で熱が出てしまいそう。



『は…っ、はや、と……!?』

「……静かにしてろ」

『し、静かにって言われても…っ』

「……」

『………っ』



私よりも隼人の方が冷えてる。
悪態ついていても、もしかして随分と家の前でうろうろしていたのかもしれない。

無愛想にしていても私の事を心配してくれてたの?

身体の力を抜いて甘えるように胸元に顔を寄せると隼人の少し早い心音が耳に届いた。
安心してほっと吐いた息は白く染まる。



『隼人…、あったかいね』

「………っ」

『……?』



声をかけたら隼人は私の肩を掴んで、バッと距離を取った。
我に返ったように目をぱちぱちとさせ顔は耳まで真っ赤。



「…ー…っは、早く、風邪、治せよ」

『えっ、ちょ…っはやー…』

「……じゃあな、名前!」

『と……』



……の馬鹿ー!!

照れくさかったのか隼人は私に何も言わせず全力疾走で逃げるように去っていった。



『……』



せっかくいい雰囲気だったのに、もう少しくらい一緒にいてくれたっていいじゃない!
でも、まぁ、隼人らしいと言えば、らしいけど。



『…来てくれてありがと、隼人』



遠くで小さくなっていく隼人の背中に向かって呟いて笑った。

さーてと!
そろそろ家に入ろうっと。

外に長くいて風邪をぶり返したらお正月まで台無しになっちゃう!



『あれっ?』



隼人の後姿を見送って家の中に入ろうとしたらドアノブに掛けられてるビニール袋に気がついた。



『何だろ、これ…』



不思議に思いながら中を見ると綺麗にラッピングされたプレゼントが入っていた。
ビニール袋は隼人から貰ったプリンとゼリーが入った袋と同じコンビニの物だった。



『………もう!隼人ってば!』



直接、渡してくれればいいのにね?
そう思いつつも私は嬉しくなって、ふふっと笑ってプレゼントをぎゅっと抱き締めた。












素敵なプレゼントありがとう、サンタさん!



「ただ今、帰りました!これ、ジュースと菓子っス」

「ありがとう、獄寺君、おかえり!遅かったね、何かあった?」

「えっ?い、いえいえ!べ、別に何もなかったっスよ!?」

「どうしたの?顔が赤いけど…」

「あ…、いや、あの…、そのー…」

「ははっ、もしかして、名前に会って来たのか?」

「……ッ!!」

「おっ、当たりか?」

「ち…、ちげーっての!」

「……(…図星っぽい)」



end



2010/12/25

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