恋人同士でも、きっと想いの大きさは同じじゃないと思う。
私の「好き」が100%なら、そっけない彼の「好き」は80%くらい。

20%の足りない気持ちも想って欲しいから、私が補うように接してしまう。
120%と80%、天秤がカタンと傾く音がする。

あぁ、だめ。
これじゃだめなの。

足りないから、もっともっとって思っちゃう。
私の気持ちばっかり大きくなっちゃって、アンバランスになっちゃう。



『……』



見えないから、気持ちを聞きたい。
「好き」って言葉、君から聞きたいんだ。

そうしたら、きっと丁度いいバランスになるはずから。



『ねぇ、隼人…』

「あぁ?なんだよ」

『私の事、好き?』

「は……!?」



私と隼人はツナの家へと向かっていた。

最初はいつもの調子で話していたけど、少しだけ沈黙が流れた時、つい思っていたことを言葉にしてしまった。

こんなことを言葉にしたら男の子はうざいと感じるんじゃないかって思う。

あぁ、ほら、やっぱりね。
隼人、困った顔してる。



『……』



隼人が軽々しく「好き」とか言うタイプじゃないのは分かってる。
だけど、好きだという気持ちを伝えてくれたのは告白の時、一度だけ。

だから、聞きたいの。

君からの好きって言葉。



「い、いきなりどうしたんだよ、名前…」

『…ごめん。別に、何でもない…』

「何でもないって雰囲気じゃねぇだろ…」

『……』

「………」

『変な事、言っちゃって…ごめん、ね』



「私の事、好き?」って聞いた時の隼人は困っていたけれど、すぐに顔を赤くさせた。

こういう表情は私だけが見れる顔。
他の女の子には怒鳴り散らすだけだもん。

それだけで想われてるって分かる。
だけど、やっぱり言葉が欲しいと思う私はなんて我が儘なんだろう。



「どうしたんだよ、名前」

『……私、さ』

「……?」

『ずっと隼人と一緒にいたいな、って思って…』

「オレ、と…?」



こくんと頷いて、赤くなる頬は俯いて隠した。
隼人以外の人なんて考えられないくらい、好きで、大好きで。

こんなの男の子にとっては重いかもしれない。

でも、止まらないの。
溢れるから気持ち、言葉にしてしまう。



「……なぁ、名前」

『……?』

「…お前はさ、オレの前から、いなくならないでくれ」

『え……?』

「大切なもん、昔…いきなり、なくなったんだ」

『大切な、もの?』

「大切なものだったんだって気がついたら、皆、なくなってた。」

『……』



そっと呟く隼人は、とても寂しそう。

そんな隼人を見ていられなくて、私の胸がズキンと痛む。
思わず、ぎゅっと抱きついた。



「………!?」

『いなくならないよ、こんなに隼人のこと好きなんだもん』

「名前……」

『……傍に、いたい』

「……」

『ずっと、傍にいたい』

「名前…」

『……』

「……サンキュ」

『隼人も、いなくなっちゃ…嫌だからね…?』

「あぁ……」



いなくなる訳ねぇだろ。
むっと眉間に皺を寄せて体温の低い手で小突かれた。

冷たいよ、と笑うと私の手を掴んで歩き出す。
隼人は不器用に笑って手を絡めた。



『……』



それだけなのに、嬉しくて、さっきよりももっと好きになっちゃう。



「つか、よぉ…」

『ん…?』

「…オレの方が絶対に惚れてっから。」

『えっ?』

「……っ何でもねぇ。」

『……隼人』



えっ?って聞き返したんじゃないよ。
驚いて出ちゃった言葉。



『……っだいすき!』

「……知ってる」

『ふふっ』

「…オレも、好きだぜ、名前」

『…ー…知ってる!』

「……あぁ」

『……』



ねぇ、隼人。
想いは天秤じゃないのかもね?

気持ちはいつもアンバランス。

100%の気持ちなんてない。
好きって気持ちは安定しない。

好きって気持ちは、お互いに追いかけっこしてるみたい。

今より、もっともっと君を好きになりたいよ、って!



想いに上限はないんだね。



end



2009/01/08

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