今日は十二月二十五日、クリスマス。

今年はあいつと恋人同士だから、もしかしたら二人きりのクリスマスになるかも…って思っていたのに例年通りツナの家でクリスマスパーティーをする事になった。

人数が多いからツナの部屋じゃなくてリビングで集まり賑やかなパーティーが始まる。
楽しいからいいんだけどクリスマスくらいは二人きりでロマンチックに過ごしたかったな。



『……』



彼氏である獄寺隼人は付き合ってる私を放置で常にツナの傍にいる。

今日だけじゃない。
獄寺はいつも彼女の私より十代目であるツナ優先。

今日くらいは私の方に来てくれてもいいじゃない。
新しい服を買ってオシャレしてきたのに眼中なしだなんて寂しすぎる。



『…獄寺のばーか。』

「はひーっ!名前ちゃん、どうしたんですか!?浮かない顔して…もしかして具合、悪かったりします!?」

『大丈夫だよ、ハル。ただ、獄寺が…』

「獄寺さんですか?あ、そういえば、獄寺さんはこんな素敵な彼女さんを放ってさっきからツナさんの隣……」

『さっきから話もしてないんだ…』

「ハル、許せません!!」

『えっ!?』

「ちょっと一言、言ってきます!!」

『えぇ!?いいよ、別に…っ』

「ツナさんの隣はハルがゲットです!!負ける訳いきません…!!」

『あぁー…そういう事ね、ハル…』



ハルはファイト一発、気合いを入れて立ち上がりツナと獄寺の間に入った。



「ツナさん!ジューシーなチキンはいかがですかっ?」

「んなっ!離れろ、アホ女!」

「獄寺さんこそ離れてください!」

「オレは十代目の右腕だ!」

「意味が分かりません!恋人たちのクリスマスですよ!ハルはツナさんの傍にいたいんですーっ」

「誰と誰が恋人ーっ!?ちょっ、ハル、何を言ってるんだよ!」

「え?そ、そりゃあ、ハルとツナさんの事に決まってるじゃないですかっ!きゃーっ!恥ずかしいですーっ!!」

「ふざけんな、てめぇ!十代目から離れやがれ!!」



いつものやり取りに山本、笹川先輩、京子もフゥ太君も笑っていた。

私もハルみたいに素直になってみたい。
そう思うけど「獄寺の傍にいたい」とか言う自分がまったく想像、出来ない。



「ツナさんの隣にいたっていいじゃないですか!獄寺さんの許可なんて必要ありません!ねっ、ツナさん!」

「十代目が困ってるって言ってんだよ、アホ女!!ですよね、十代目!!」

「はは……、どっちもどっちなんだけど…」

「隼人、騒いでる暇があるなら料理を運ぶの手伝いなさい」

「あっ、姉貴…ッ!?う、ぐぁ…っ!!」

「ちょっ、獄寺君!?」

「はひっ!?」



ビアンキさんの登場で獄寺はお腹を押さえながら倒れてしまった。

倒れてしまっては、このバトルはハルの勝ち。
意識のない獄寺を山本に運んでもらいツナのベッドで休ませた。



「うぅ……」

「獄寺君、大丈夫かな…」

『あ…、私、見てるからツナは戻っていいよ?』

「え…?でも…」

『平和にクリスマスを過ごせるの今だけかもよ、目を覚ましたらまた騒ぎ出すと思うから』

「それはー……うん、そうかも…」

『でしょ?』

「う、うん…それじゃ…」



また様子を見にくるね。
そう言ってツナは静かにドアを閉めた。

ベッドで眠っている獄寺はうなされていて顔が青い。
目が覚めても、また倒れたら心配だしビアンキさんにはサングラスをかけてもらわないとな。



『……』

「…ー…っ、あ…!?」

『獄寺…?』

「……オレ、は」

『ビアンキさんを見て倒れたの』

「そ、そうか…、また姉貴かよ…」

『戻ろうか。ツナ、心配してたよ』

「……あ、あのよ」

『何?』



不機嫌な私を察しているのか、獄寺は控えめに話しかけて来た。
ツナに心配かけているのに私と話すだなんて珍しい……、と言うよりも初めてかもしれない。



『どうしたの…?』

「……」



獄寺は眉間に皴を寄せて私をじっと見つめる。
いつまでも話を切り出さないから立ち上がると小さく声を上げた。



「あ……」

『ほら、早く行こう』

「……っ待てって言ってんだろ、名前」

『何か話あるなら、早く話してよ』

「……」

『ないなら戻ろう、お腹が空いちゃった』

「……、……名前」

『……?』

「…ー…ほらよ」

『え…っ?あ…っ!?』



獄寺の声に振り向くと小さな箱を投げられた。
びっくりして落としそうになったけど何とかキャッチして、その箱を見る。



『えっ、何これ?』

「見りゃ分かるだろ。ク、クリスマスプレゼントだ!」

『へぇ、ツナに?渡してきてほしいの?』

「なっ!?お前に決まってんだろっ!!いらねぇなら返せ…っ」

『や、やだよっ!もう貰っちゃったもん!』

「き、気に入るか分からねぇけどな……』

『…、……』

「…いいか?家に帰ったら開けろよ。」

『……、…もう開けちゃった』

「はぁ!?」

『ほら』



中に入っていたのは指輪だった。

指にはめて獄寺に見せると顔を真っ赤にしている。
煮え切らない態度をしていたのは私にプレゼントを渡すためだったんだと思うと可愛い。

そう思ってるのが顔に出てニヤニヤしてしまう。
そんな私を見て今度は獄寺が不機嫌そう。

欲を言えば彼女に指輪をプレゼントする時くらい、好きと一言、言ってくれてもいいのにな。

でも、まぁ、それが獄寺らしいと言えばらしいから黙っておこう。
好きだの愛してるだの、すぐ口にする人なんて軽いイメージがあるもの。

獄寺はそういうタイプじゃない。



『………』

「…十代目をお待ちさせる訳にはいかねぇ。さっさと行くぞ、名前」

『あっ、待ってよ』

「…んだよ」

『……ありがと、獄寺』

「……っ」



背伸びをして獄寺の頬にキスをした。
離れると獄寺は何をされたのか理解、出来ていないらしく間抜けな顔で呆然としている。
そんな獄寺をくすくす笑い、背中を向けた。



『あー、お腹、空いた!お寿司、まだ残ってるかなー』

「お、お前、今…っ」

『どうしたの?顔、真っ赤だよ、獄寺』

「…ー…っ」



私は、そう言い残して階段を下りた。

獄寺に顔が真っ赤って言ったけど私も顔が赤くなっていると思う。
余裕があるふりする女の子なんて可愛くないかも知れない。

だけど獄寺がツナばかり優先するから、振り回したくなっちゃった。



『……』



ねぇ、獄寺。
少しの間でいいから、頭の中、私でいっぱいにして?









(私のことも考えて欲しいな)(……いつも考えてるっつーの)



end



2009/01/02

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