今日はずっと楽しみにしてたデートの日。
なのに何で私達は不良に囲まれなきゃいけないの!?

あぁ、もう!恭弥のばかっ!
日頃、所構わず喧嘩を売りすぎだよ!

ほんの数時間で不良に絡まれるの何度目だと思ってるの!



『きょ、恭弥、今度はどうするの?』

「ワォ、草食動物が群れたところで意味がないのにね」



また咬み殺して来るからちょっと待っててよ。
そう言ってトンファーをどこからともなく取り出すと構える。

そして目にも留まらぬ早さで不良達を倒していった。
これだけ動いたのに息一つ乱れないのは、さすが並盛風紀委員長、雲雀恭弥だ。



「名前、終わったよ。…行こうか」

『ねぇ、恭弥……』

「なに?」

『今日って一応、デートだよね?草食動物咬み殺しちゃおうツアーじゃないよね?』

「一応じゃなくてちゃんとデートのつもりだよ。名前が遊びたいって言うから、こうしてるんじゃない」

『そ、そうだけど、さ…』

「何か不満なのかい」

『……』



そりゃあ、群れが嫌いな恭弥がわざわざ街でデートしてくれるなんて、これ以上の事はないけど心の奥がもやもやしてしまう。

ゆっくり話せないし落ち着けない。
何にも言ってくれないけど今日の私、恭弥にどう思われているんだろう?

少しは可愛いって思ってくれてる…?



「…草食動物咬み殺そうツアーがお望みならいつでも連れてってあげるけど?」

『えっ!?い、いや…それは遠慮するよ……!!』

「だったら何?不満があるならさっさと言いなよ」

『不満って言うか、その…絡まれてばかりでデートらしくないかなって…』

「君が言うデートらしいってどういうの?」

『えーっと、例えば…』

「……というか」

『なに?』



私がデートについて考えていると急に恭弥の機嫌が悪くなった。
鋭い瞳で軽く睨まれて私は訳が分からず一歩、後ずさる。

な、何でいきなり睨まれなきゃいけないの!?
私、変な事を言った?



『な、何……』

「名前は僕以外の男とデートした事があるのかい」

『………は?』

「比べるって事はデートらしいデートをしたから。…そうだろ」

『………』

「…………」

『……気になる、の?』

「……別に。」



恭弥はぷいっとそっぽを向いて拗ねてしまった。
気にしてないふりをしてるけど、絶対に嘘。

恭弥は自分の都合が悪いと人の顔を見ないもん。
というか、いつも我が道を突っ走ってる恭弥が拗ねてるなんて可愛くて綻んじゃう。



『ふふっ、恭弥、可愛い』

「……さっさと言わないと咬み殺すよ」

『へ?何を?』

「他の誰かとデートしたのかって聞いたはずだけど。質問に答えなよ」

『さっき別にって言ってたのはだーれかなー』

「………」

『…なんてね、初デートは恭弥に決まってるでしょ!』



そっぽ向いてる恭弥を覗き込んで言うと、彼の機嫌は良くなったみたいで不器用に微笑んでくれた。
分かりにくいようで意外と分かりやすいと最近つくづく思う。



「…そう。だったらいいよ。…行こうか。」

『うん!』



私たちは手を繋ぎ歩き出す。
心なしか恭弥は私に合わせて、いつもよりもゆっくり歩いてくれてる。

それがすごく嬉しい。

デートらしくない、と思ったけど全然、そんな事ないかも。



『あ!そうだ!ねぇ、恭弥!プリクラを撮ろうよ、プリクラ!!』

「そんなの撮ってどうするんだい」

『携帯に貼ったりしたくない?』

「したくない。」

『えーっ!!なんで!家とか授業中でもす、好きな人の顔、見れるんだよ!?』

「会いたくなったら会いに行くし、授業中だろうが名前を呼び出すからいい。」

『きょ、恭弥…!?』



どうしてサラッと嬉しくなるような事を言っちゃうかな!?
しかも本人は無意識っぽいし…!!

私を呼び出すっていうのは、ちょっとどうかと思うけれど、それでも嬉しいと思うのはとことん恭弥に惚れてる証拠。



「……?顔、赤いけどどうかしたのかい」

『べ、別になんでもない!』

「そう。じゃあ、行くよ」

『え?どこに?』

「プリクラを撮りに行くんじゃないの?今日くらい名前の言うデートらしい事に付き合ってあげるよ」

『あ、ありがと……』

「…それに今日の名前の格好、無駄に気合いが入ってるしね」

『へ……』



恭弥は私の格好を見て口角を上げると、プリクラにでも撮っておいた方がいいでしょ、と一言、付け足す。

ちょっ!さっきまでの拗ねた恭弥はどこ行ったのよ!

もうすっかり、いつもの恭弥のペースになっちゃった…!!



『どーせ、今日は無駄にオシャレしてきましたよーっだ。恭弥は気に入ってないみたいだけど!』

「可愛いと思ってるけど」

『な……っ!?』

「あぁ、言って欲しかったんだ?」

『……っ!?』

「……」



恭弥は不敵に微笑むともう一度、可愛いよ、と耳元で囁いた。
直に耳に入ってくる恭弥の声にカァァ、と顔が熱くなる。



「ワォ、図星、だったみたいだね」

『……っ』



恭弥って本当に意地悪!
普段は言ってくれないのに、こういう時ばっかり素直に言うんだから!








今日の私は全部、大好きな君のため!



恥ずかしくて照れ隠しにドンッと抱きついたら、今度は君が顔を赤くした。



end



2007/06/27
35000hitキリリク
神夜坂班夢様へ

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