放課後の教室で一人、窓の外を眺める。
最近は一日一日が妙に早く感じる。

すぐに終わってしまう今日がもったいなくて窓から外を見ていると桜が蕾をつけている事に気づいた。
冷たい風が桜の蕾を揺らし私の頬を掠める。



『……はぁ』



そろそろ帰ろうかな。
いつまでも教室にいる訳にはいかないもん。



『……』



三年生になった今、来年は了平と一緒に桜の蕾が開くのを見られない。
そう思ったら切なくて悲しくなって、ため息ばかり。

いつの間にか好きになってた。
入学式の後、二人でサボった時は変な人って思ってたのに。

三年間クラスが同じ、席替えしても連続で隣の席になって、「また隣!?」って文句を言ったけど本当は嬉しかった。

一緒に馬鹿なこと話して遊んで、ちょっとした事で了平はぷんすか!とか怒ったけど全然、怖くないよって言って二人で笑ったり三年間、ずっと楽しかった。



『………』



それが四月から出来なくなるんだと思うと告白を考える。
だけど、いい友達だからこそ今のままでいたいって気持ちもある。

だって、あいつは私の事を女として見ていない。
了平は平気かも知れないけど、私は失恋したら絶対に今までみたいに接することが出来ない。

卒業したら、会えなくなるのが嫌。
会うのが気まずくなる別れなんて嫌。

どうしたらいいんだろう、と外に出て上を見上げると空は赤く染まっていた。

綺麗な夕焼けだけど、今日はちょっと寂しくなる。
日が沈んで今日が終わったら、また卒業に一日、近づくんだ。



「名前先輩、今、帰りっすか?」

『……!』



ぼーっと空を見て立ち止まっていたら部活中の山本君に声をかけられた。
振り向くと軽く頭を下げて挨拶してくれた。



『山本君は部活中?』

「や、自主練っス。走り込みなんですけど今日はもう切り上げてバッティングセンターに行こうかなっと」

『へぇ、バッティングセンターか!あ!三年生になったら活躍、期待してるからね!』

「ははっ、任せてください!どんな試合も負けないっス!名前先輩も、たまには応援に来てくださいよ」

『もちろん!頑張ってよね!』

「っス!あ…、それじゃオレ、部室に行くんで!笹川先輩も、また明日!」

『は?笹川先輩?』

「後ろにいますよ、ほら。一緒に帰るつもりじゃなかったんスか?」



山本君に言われて校門を見ると、そこには本当に了平がいて、こちらに向かって手を振っていた。
帰ったとばかり思っていたからびっくり。

もしかして妹の京子ちゃんを待ってるのかな?

そう思いながら、山本君と別れて了平の元へと向かうと珍しく難しい顔していて首を傾げた。



『どうしたのよ、そんな顔して』

「べ、別に何でもないぞ!それよりも随分と遅かったな、名前」

『ちょっとね。了平はどうしてここに?京子ちゃんを待ってるの?』

「む、京子ではなくてお前を待っていたのだ!」

『私?』

「あぁ、話したい事があってな。ただ……」

『どうしたのよ』

「……」

『了平?』

「………っ話したい事を極限に忘れた!!」

『はぁ!?』



随分と言葉を溜めてるなと思ったら了平はオーバーリアクションで話したいこと忘れたと言い切った。

そんな了平を見ていたら、先程までの寂しい気持ちが吹き飛んで笑ってしまった。

了平の一言で気分がすぐに変わっちゃう。

あぁ、やっぱり好きだなぁ。
諦めきれなくなっちゃうよ、ばか。



「む、そんなに笑う事か!」

『わ、笑うよ、だって普通、話したいことを忘れる?』

「し、仕方ないではないか!ついさっきまでは覚えていたのだ!お前が山本と話していたからいかん!」

『そんなに長く話してなかったと思うけど』

「時間の問題ではない!話していたのが女子ならば忘れなかった!山本と話していなければ、もやもやした炎を燃やす事なく今頃、極限に熱い告白をだな!」

『は?告白?私に謝りたいことでもある訳?』

「む……、おぉ!思い出したぞ…!!」



話したいことを思い出したと言う了平は拳を握ってプルプルと震えてる。
何をそんなに気合いを入れてるのか、力を入れすぎて顔がほんのりと赤い。



『……』



熱い告白か……。
了平のことだから「卒業してもオレ達は友だー!!」とか、そんな感じじゃないかな。

そうしたら「当たり前でしょ」って言って笑おう。
友達として傍に居られるなら、それも悪くない。

そう考えてる自分に苦笑いして話の続きを待っていると後ろから声をかけられた。



「あれ、笹川先輩に名前先輩、まだいたんスか?」

『あ、山本君…』

「……?笹川先輩、どうしたんスか」

「名前!!」

『は、はい!?な、なにっ!?』

「そして、山本!」

「はい?」

「お前には絶対に渡さん!」

「は…、はぁ……」

『……?』



先程よりも気合いが入った声で名前を呼ばれてビクッと反応してしまう。
当たり前だけど、いきなり話を振られた山本君はきょとんとしていた。



「名前!」

『何?』

「オ、オレはだな……」

『だから、何?どうしたの?』

「オレはお前が……っ」

『なに?』

「……っ名前が」

『……?』

「極限に大好きだぁぁぁーっ!!」



耳が痛くなるくらいの大声。

私の事が極限に大好き?
夢かと思ったけど耳の奥までキーンと響いた声は夢なんかじゃない。

校門で大声での告白。
部活で校庭に残ってる人から注目が集まっていて山本君がすぐ傍にいるのに、怒るのも忘れて了平に抱き着いた。

ドンッと抱きついたら、了平は真っ赤になって驚いていたけれど受け止めてくれた。



『……っ』



これからは友達じゃなくて恋人なんだと思うと嬉しくて涙が出てきそう。
だけど、笑った。

泣くなんて、私らしくない。
嬉しいなら笑え!って了平は言うと思うから。



『……』



寒い冬が終わったら、もうすぐ春がやってくる。

私の大好きな季節。












これからも一緒に桜を見ようね



end



2009/03/13
二周年フリリク企画
萌様へ!
リクエストありがとうございました!

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