天気がいい日の放課後は屋上でのんびりするのが私の日課。

今日もまたぽかぽかしてるいい天気だから、私は足取り軽く屋上への階段を上がる。

私が一番かな?って思っていたのに既に先客が特等席にいた。

一人と一羽、つまりは雲雀先輩とヒバードだ。



『雲雀先輩、こんにちは!』

「やぁ、名前」

≪ナマエッ、ナマエッ≫



雲雀先輩。
最初は怖かったけど、こうして屋上で出会って話してるうちに仲良くなった。
ヒバードがいなければ、雲雀先輩を見た時点で屋上からユーターンしてたかもしれない。

雲雀先輩が怖くないって思えたのももふもふで可愛いヒバードのおかげ。



『ヒバード、今日も可愛いなぁ』

「君は本当にこの子が好きだね」

『だって、可愛いじゃないですか!これで飛べるのかってくらい真ん丸ボディで!』

「それ褒めてるのかい」

『もちろん褒め言葉です!』



そう言って私は雲雀先輩の隣に腰を下ろす。

ぽつりぽつりと話しながらひなたぼっこをしていると、ヒバードは雲雀先輩に擦り寄って甘え始めた。

雲雀先輩が私と話してるからヤキモチを焼いてるの?

雲雀先輩は普段、そんなにお世話をしてないみたいけど、ヒバードはご主人様が大好きみたい。

ヒバードは私にも懐いてるけど、やっぱり雲雀先輩と私とじゃ態度が全然、違う。

ヒバードに懐かれてる雲雀先輩が羨ましいなぁ。



「ねぇ、くすぐったいよ」

≪ミードリタナビクー≫

「誤魔化さないで名前の所に行きなよ」



雲雀先輩がそう言ってもヒバードは私の方に来やしない。

うぅ、寂しい。
今は雲雀先輩に構って欲しい気分なのかなぁ?

ヒバードに懐かれてる雲雀先輩に妬いちゃうよ!

私もヒバードをなでなでしたい!



『……』

「なに?」

『へ……』

「そんな顔で見つめてるから用があるんじゃないの」

『そんな顔?私、どんな顔をしてました?』

「それは…」

『それは?』

「…なんでもない。」

『変な雲雀先輩』

「変なのはさっきからジッと見てる名前の方だよ」

『だって…』

「なに?」



改めて雲雀さんとヒバードを見つめる。
見つめてもヒバードは私の所に来ない。

うん、やっぱり寂しい。



『……ずるい』

「ずるい?」

『ずるいです。ヒバード、羨ましい。』

「羨ましい…?」

『はい…』



むぅ、と口を尖らせたら雲雀先輩は驚いた顔をして私を見つめた。

雲雀先輩がポーカーフェイスを崩すなんて珍しいな。

私、何か変な事を言った?



『どうかしました?』

「……そんなに、羨ましいのかい」

『……?はい…』



少しだけ雲雀先輩の様子がおかしいと思ったけれど、私は素直にコクンと頷いた。

そんな私を見て雲雀先輩はふっと微笑する。

私は不機嫌を顔に出したままなのに何で笑うの?



『私…』

「……いいよ」

『へ……?』

「羨ましいならもっと傍においで」

『い、いいんですか?』

「君だから、いいよ」

『……!』



不機嫌だったのに雲雀先輩の一言で上機嫌に早変わり。

私はニコニコして肩が触れるくらい雲雀先輩の傍に寄った。



『ヒバード!雲雀先輩の許可も出たし私の所にも来てっ』

「は……?」

『ん?』

「ちょっと、君、まさか…」

『何ですか?』

「……」

『雲雀先輩?』

「ずるくて羨ましいって言ったのはどういうこと」

『……?雲雀先輩がずるくて羨ましいってことですよ?』

「……」

『私もヒバードと遊びたいです!』

「………はぁ」

『どうしたんですか、溜め息なんて吐いて!』



首を傾げて雲雀先輩を見たらまた深い溜め息を吐かれた。

さっきまで優しい表情だったのに今はむっとしている。

何かまずい事を言っちゃった?



『あの、雲雀先輩…』

「……」

『……!』



雲雀先輩が黙ったままで気まずくて名前を呼んだら、彼の手は何故か私の後頭部を持った。



『な、何ですか…?何で私の頭を…っ』

「こうするためだよ」



そう言った雲雀先輩は不敵に笑って私の後頭部を持つ手にぐっと力を入れた。

予想外の力で私はバランスを崩し、雲雀先輩の膝の上に倒れてしまう。



『うぅ、痛いです…』

「君が悪い」

『私、何も悪いことしてないのに…』

「……」

『あ、あれ?』



雲雀先輩は私の肩に手を置き、起き上がる事を許してくれない。

力を入れようにも不自然な体勢だから思うようにはならなくて、私はしぶしぶ雲雀先輩の膝の上に頭を置き寝転ぶ状態になった。

寝転ぶっていうか、これって雲雀先輩に膝枕されてる状態だよね?

仕方ないとはいえ恥ずかしい。
そう思った時には既に顔が赤くなっていたらしく雲雀先輩に笑われた。



『な、何でこんなこと…っ』

「静かにしてなよ。こんなにいい天気なんだからね」

『で、でも…』

≪ナマエッ、ナマエッ≫

『ヒバード…!』



ヒバードは雲雀先輩の肩から膝の上、つまりは私の顔の近くに来てくれた。

至近距離でくりくりした瞳で見つめられたらきゅんとしちゃう。

そのまま静かにしていたらヒバードは私のすぐ傍で居眠りを始めた。



『ヒバード、可愛い…』

「君も眠ったら?」

『も、もう起きますよ!』

「君が起きたら、この子も起きるよ」

『う……』



確かに私が起きたらヒバードも起きちゃうかも。

こんなに気持ち良さそうにしてるのに起こしちゃうのは可哀相。

そう思いながら控えめに雲雀先輩を見ると、私が起きるのを躊躇ってる事を見透かしているようで口角を上げていた。

それが何だかちょっとだけむっとして、私は雲雀先輩を見上げる。



「何、その顔は」

『何でもない、です』



なんて言っても不満はある。

だけど、仰向けになったら今の状態を思い出してしまい、それ所じゃなくなってしまった。

な、何で雲雀先輩に膝枕をされなきゃいけないんだろう?

嫌というよりかは恥ずかしくて落ち着かないよ!



『……っ』

「機嫌を直しなよ、名前」



雲雀先輩は私を宥めるように頭を撫でた。

頭を撫でられて、そんな優しい声で名前を呼ばれたら怒る気も失せちゃった。



『……(…私って単純かも)』

「…ねぇ、名前」

『はい?』

「もう、怒ってないよね」

『な……っ!』

「……」



雲雀先輩が勝ち誇ったように微笑む。

どうやら私の機嫌が直ったことはお見通しみたい。

やっぱり、雲雀先輩ってずるい人だ。












視界いっぱいに広がる綺麗な青と優しい表情に見惚れた。



『……っ』



ずるい。

羨ましい。

雲雀先輩が、じゃなくて、今はヒバードがずるいと思う。羨ましいって思っちゃう。

だって、雲雀先輩の一番、近くにいられるんだもん!

こう思うのは、きっと、私は雲雀先輩が好きだから…、なのかな?



end



2012/05/30

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